■ スパダリ土方と執着系坂田

買い物行ってきてくんね?だの、今日は絶対キテルから金貸してくんね?と言ってパチンコに行くだの、飯いらねぇとご飯を作った後に言われるだの。まあそれはそれは飽きるぐらいにあった。あの天パは私を家政婦かなにかと勘違いしてんじゃないだろうか。ふざけんなよ、誰が金にすらならねぇ家事をやってると思ってんだ。挙句の果てにはお金を貸すという行為。しかも返ってこないからね。パチられた=犯罪と言っても過言ではない。真選組にお世話になるかあん?コルァ?一番腹立ったのはアレだよ。明け方に電話が来て「助けてくれ」とか死にそうな声で言うもんだから、何事かと思って慌てて銀さんの家まで行けば「腹減って死にそう助けて」とか言われたことだよ。しかも冷蔵庫にはなんにもないの。食費は全部私持ちなの。作ったけどね!ちゃんとした朝ご飯作ったけどね!その後でお礼も何もなくそのまま私を放置で依頼に行ったことには地団駄を踏む勢いだったね。


「苦労してんな」

「どんだけ興味が無いか伝わってくるね!」

「ねーからな」

「冷たい」


街で見かけた黒服の男は、私の顔を見て物凄く面倒くさそうな顔をして踵を返した。それを許さず問答無用で近くの甘味屋に連れ込み冒頭の愚痴を述べれば、団子にマヨネーズをぶっかけながら冷たい反応をもらった。うぇっぷ、団子が可哀想だよ。
嬉々としてマヨたっぷりの団子を口に頬張る男を若干引きながらも見つめれば、居心地悪そうにこちらを見る。


「……んだよ」

「やっぱ土方さんカッコイイなぁって」

「そーかい」

「うわ、言われ慣れてるからってそんな反応。世の男に嫌われる訳だよ」

「俺が愛想振りまいても気持ち悪ぃだけだろうが」

「それもそうか」


鼻で笑った土方さんに納得の言葉を返す。あー、なんで銀さんに惚れたんだ私。こんなにカッコイイ男が目の前にいるのに。しかも甲斐性もある。ヤダ、結婚して土方さん…。


「ふざけた事言ってんなよ。先ずは別れてから言いに来い」

「え、考えてくれるんです?」

「なまえ次第だな」


団子の串を歯に挟んでニッと笑う土方さんのカッコイイことカッコイイこと。惚れたよね。あんな碌でなしとは雲泥の差だよねホントに。しかもお付き合いすっ飛ばして結婚だからね。土方さんに惚れてる女の子に私きっと殺されるんじゃないかな。


「馬鹿言うな。俺が殺させねぇよ」

「土方さんほんとカッコイイ」


両手を組んで土方さんを見れば、何やらノリノリな土方さんはキメ顔を作ってくれた。携帯があれば写メってたね。


「という訳だから、別れます」

「待ってェェェェ!!!」


万事屋にある数少ない荷物を纏めて、唖然とこちらを見ているだけだった銀さんにそんな絶叫を上げられた。玄関の引き戸を開いた私の後ろからスパァンッと激しい音を立てて扉を閉めた銀さん。オイオイ玄関が壊れちまうぜ銀さん。ただでさえもう寿命ギリギリなのに。


「ちょ、ちょっと待とうかなまえちゃん。なに?どしたの?俺なんかした?」

「今までの行いを振り返りやがれプー太郎」

「辛辣!」

「私は次の恋に旅立つんだ。見送ってよ」

「見送れるかァァァ!なんでテメーの女の次の恋を応援してやんなきゃいけねぇんだよ!俺はそこまでできた男でもなけりゃ別れるつもりもねぇよ!次の恋とか言っちゃった!泣きそう!」


情緒不安定かこの男は。両肩をガックンガックン掴まれ揺らされそんな言葉を投げかけられる。というか唾を飛ばさないでほしい。うわ、銀さんの涙目とか初めて見た。思ったより可愛くない。


「違うの銀さん。私は別に伺いを立ててるわけじゃないの。断定してるの。別れてください、じゃなくて別れます」

「え、じゃあなに?俺が何言っても別れるの?」

「そうなるね。土方さんへと飛び立つよ」

「羽根をもぎ取ってでも留まらせてやる」


私の彼氏はヤンデレ属性。ラノベのタイトルみたいだ、笑えない。土方さんの名前を出した途端に銀さんの涙が引っ込んで、代わりに鬼も逃げ出すような形相。やだ、本気で怒ってる。


「何言われた?人の女に手ぇ出すなんざ男の風上にもおけねぇな」

「プー太郎に家政婦の如き扱いを受けてるって言ったら、俺が養ってやる的なことを言われたんだよ。そりゃそっちに傾くよね」

「野郎にも腹立つけどなまえも仕置が必要だな」


結構本気なトーンで言ってくるからこれはヤバイと思った。とりあえず謝って許しを得たけど、土方さんと銀さんの確執はもっと深まった気がする。


2016/10/28