■ 眠気が欲しいロー

「ローさん、眠くないの?」

「眠いなら先に寝てろ」


枕から顔を上げてベッド近くの椅子に座って本を読んでいるローさんを見る。言葉は乱暴でも言い方は優しいからホントもう堪らないぐらいカッコイイ。
ローさんの言葉には申し訳ないが従えない。私はローさんと一緒に寝たいのだ。どんなに優しく頭を撫でられようと、思わず眠気に気が遠くなりそうになろうと、私はローさんが隣で寝てくれるまで寝ないぞ。


「ローさん寝ようよ。眠たいよ」

「だから、先に寝てろって言ってんだろ」

「……眠たくないの?」

「……俺はすぐ寝れるお前が羨ましい」


パタンと本を閉じてため息をついたローさんが前屈みになって目を細めた。空気読めないけど、その格好写真に撮りたいぐらいにカッコイイよローさん!手配書のローさんも素敵だけどやっぱり動いてるローさんが一番だよ!
それよりもすぐ寝れるとはどういう事だ。私はそんなに寝るの早いかな?確かに布団に潜り込んで二分も立たないうちに眠気に襲われる。今も襲われてる。でもローさんのために頑張って起きてるんだぜ!


「私だって寝れない夜あるよ?」

「……それは下世話な意味でか?」

「ちちち違う!こら、笑うな!」


ククッと喉で笑うローさんに慌てて体を起こして反論の声を上げる。変わらず笑うローさんはイケメンだけどその発言だけは許せない。デリカシーに欠ける発言は駄目です。
唇を尖らせると言うブサイクな顔を好きな人の前でさらしながらも、どうしようもない気持ちなので仕方ない。ローさんは愉快そうに笑ってからもふもふの帽子を外して私の隣へと潜り込んでくる。


「冗談だ。そんなに怒るな」

「んん、許した」

「よし」


くしゃくしゃと頭を撫でられてもう何だかどうでも良くなった。丸め込まれたような気もするけどローさんにだからもういいや。


「寝れないっつってもすぐ寝てんじゃねぇか、なまえは」

「え、ん?」

「何だ?」

「私ローさんが傍に居るときしか寝てないよ」


きょとんとした顔でこちらを見てくるローさんは大変珍しい。可愛い。短めの黒髪に手を伸ばして優しく撫でてみる。ちょっと固い髪質は好き。ローさんのという前置きが必要になるけど。


「………なまえ、」

「はい?」

「………」

「どうしたのローさん?」

「…寝るか」


ため息をついて枕に突っ伏したローさんの後頭部を見ながら、くぐもった声に一つ頷いてすりすりとローさんに擦り寄る。ふへへ、あったかいなぁ。


「ローさん、おやすみなさい」

「ああ、おやすみ」


2016/01/03
無防備過ぎやしないか