■ サイタマと買い物

隣の部屋の扉をノックする。数秒待ってみた、反応無し。少し強めに叩く。これもまた反応無し。立て掛けられている傘で叩く。……やっぱり反応無し。今度は握り拳を作って殴打。……反応無し。手強い。


「うるせぇぇぇぇっっ!!!」

「あ、やっほー、サイタマ」

「今何時だと思ってんだ!」

「夜中の3時!」

「帰れ」


扉を開けて怒鳴り散らしたサイタマは想定内。帰れと言われたのも想定内だ。
締めようとする扉にドヤ顔で足を入れて食い止めた。扉を掴んで青筋を立てるサイタマに若干ビビりながらも素早く用件を伝える。


「コンビニ行こ!」

「帰れ」


そうは言ってもサイタマは優しいからすぐに上着を持って出てきてくれる。サイタマは優しいなぁとニヤけながら言えばデコピンされた。痛みに悶えた。このっ、馬鹿力め…!


「うお、寒っ!」

「防寒対策はバッチリだぜ!」

「……太って見えんぞ」

「うっさいハゲ」


二度目のデコピンを貰った。例に漏れなく悶えた。手が冷えたとサイタマに愚痴って手を握ってもらったり、サイタマがさり気なく歩幅を合わせてくれたりと彼氏彼女っぽく仲良く並んでコンビニに向かう。まあ私の我が儘とサイタマの優しさなんだけどな!まだサイタマは彼氏じゃないけどな!いずれは私の彼氏だ。誰にも譲らん。


「ビバッ!24時間営業コンビニ!」

「なまえのそう言う恥ずかしげもないとこ時々好きだわ」

「褒められた!……褒められた?」

「褒めた褒めた」


コンビニの前で両手を広げれば、サイタマに頭を撫でられた。もう撫でられたとかそういう次元じゃなかった。グシャグシャだもんこれ。
中に入ってすぐにアイスコーナーに向かう。サイタマはおつまみ見に行ってる。着いてきてくれたお礼に後で何か買ってあげよう。


「嘘だろ。このクソ寒い時にアイスってお前…」

「ふふん。サイタマには分からないんだ!こたつで食べるアイスの美味しさが!」

「分かったからちょっと声落とせ。なまえは無駄に声デケェ」

「うむ」


サイタマが選んだおつまみと共にアイスをレジに並べればサイタマにすごい驚かれた。
ごめんね店員さん、騒がしくしちゃって。でもサイタマのことをそんな凝視してもお前にはやらんぞ。何か頭部の方を主に凝視してるけど、お前にはやらんぞ。サイタマは私の彼氏になる男だ。


「うへへ、深夜デートだぜ!」

「そーだなー。帰って寝てぇ」

「サイタマが私を抱っこして走って帰れば早くつくよ!」

「……その防寒具がなかったらやってもよかったかもなぁ」

「マジでか」


どうやらサイタマが言うには私の防寒具は着込みすぎているとのこと。始めに言われたから知ってるけどね!太って見えると言われた事は若干根に持ってる。この馬鹿力ハゲめ!
内心悪態をついて袋を振り回していると反対の手を握られた。目を丸くしてサイタマを見上げれば、ちょっとだけ不機嫌そうに眉を寄せてた。


「…早く帰りてぇとは言ってねぇだろ」

「……」

「……何だよ」

「サイタマほんとカッコイイなぁ!」


照れとかその他もろもろ含めてとりあえず言いたい事をポロッと伝えた。ニヤける口元が抑えられない。私の(次期)彼氏はやっぱりカッコイイ!
その後照れたのかデコピンされた。もちろん悶えた。


2015/12/29