■ レンズ越しでも憤怒の弓兵が輝いてる

最近の私はどうも変だ。自覚があるから良い方だとは思うけど、状況自体全く良いとは言えないから困ったものだ。というのもアーチャーをまともに見れないのである。なんと言えばいいんだろうか、こう言うと馬鹿にしてんのかって思われるかもしれないが、アーチャーが光り輝いているのである。いや本当に。眩し過ぎて直視できないのだ。輝く貌の英霊はそういう意味ではないだろうが、こっちのアーチャーはマジで輝いているのである。なぁにコレ本当に。


「おいコラ、人の話聞く時は目を合わせろってテメェが言ったんだろうが」

「いや最近本当に視力がヤバくて。アーチャーを見たら更に悪化すると思うから…」

「…ア゛?バカにしてんのかそれは?」

「いや私も何でこうなったのか聞きたいんだよぉ」


アシュヴァッターマンには申し訳ないけどその顔近付かせてこないで。輝きが増してるから。ちょっ、え?ちゃんと目と鼻と口ついてるよね?それすら認識できないぐらい白飛びしてるんだけど。黒い肌の彼が白飛びしてるんですけど。原因不明の状況を打破しようとサングラスを掛けたこともあったけど、レンズ越しでも刺してくるような光には敵わなかった。新しい宝具でも習得した?なに?蘭陵王から教わったりした?
ギリギリ目が開いてるかな?レベルの薄目でアーチャーを見れば、光り輝くそれが呆れたようにため息を零した。


「なんのため息?」

「意味分かんねぇマスターをどうしてやろうかっつーため息」

「意味分かんないのは私なんですけどぉ…」

「いいから目ェかっ開いてお前のアーチャーをしっかり見てろ。そんなんじゃ戦うもんも戦えねぇぞ」

「はわ、発言が男前。頼りにしてるよアーチャー」

「…瞼ひん剥いてやろうか」

「怖」


薄目で言ったのが気に食わなかったのか、ガリガリ頭をかくアーチャーは低く唸るように言った。震えるも目は開かない。ただでさえ眼鏡生活が始まるかもしれない視力なのに、これ以上私の視力を落としてはならぬ。眼鏡枠はマシュがいるのでキャラ被りはNGです出直せ?ていうか私今めっちゃプサイクじゃない?レフ板要らずの、というか最早ライトになってるアーチャーを前にして目ェ極限まで細めて渋い顔してるマスター、死ぬ程ブサイクなのでは?え?恥晒してるじゃん死んじゃう。


「死因:輝か死でお願いできるかな」

「どっかの医者が食いつきそうだな」

「変死体にも程がある…」

「死なせねぇわ」

「?…抱かれた?」

「お望みとあらば」


ノリよく返してくれるアーチャーってば本当にいい男。これは絆MAXですね分かります。絆0だったら絶対こんな返答こないもん。悪くて「死ねマスター」良くて「おくたばりやがれマスター」でしょ。ただの暴言!
とまあグダグダ考えた所でアシュヴァッターマンの輝度は変わらない。寧ろ増してる気がする。でも気付いたことがあるのだ。さっきから私と彼の横を通り過ぎる人が全員スルーしていくのである。挨拶はされるけどアーチャーの輝度について何も言わない、というか平気で目をかっ開きながらアーチャーを見ている。え?もしやこれ私にだけ不具合が起きてる?またバグってんな?メンテと詫び石の時間ですねぇ。


「もう白状しちゃうね」

「何も問い詰めてねぇぞ」

「アシュさんが眩し過ぎて生活に支障をきたすレベルなんだけど、ちょっとその光量落とせない?私に対して特攻掛かってるんだけど相手間違えてない?私、貴方のマスターぞ?」

「昼夜問わず輝いてる貌の奴らもいんのに俺が輝いてるわけねぇだろ。真逆だわ」

「そう言われても私の目からはアシュさんが輝いてるようにしか見えないんですよねぇ…」

「…医務室行くか?」

「本気で心配されてんの草」


ケラケラ笑ってたら本当に医務室に放り込まれて、婦長と医神に囲まれガタブルする羽目になった。違う…違うんです…病気じゃない…、あっ、新しい病原菌とかでもないと…。震えつつも何とかそう言いながら、一応アシュヴッターマンだけ何故か輝いて見えるということだけ伝えておいた。そうしていくつかの質問の後、二人は顔を見合わせ「不治の病です」とナイチンゲールが言う。あんぐりと口を開ける私に、アスクレピオスはハンッと鼻で笑って「これは僕も治せない」と退室を促された。泣いた。


2020/05/16