第九話 | ナノ 「ちょっと…な。
欲しいもんがあるんじゃ」
困ったように笑う仁王に俺は急に不安になった。
仁王の欲しいものってなんだっけ。
俺は脳みそをフル回転させて、仁王とのあらゆる記憶を辿る。
「バイクだっけ?ドライバーだっけ?」
なのに仁王は首を振るばかり。
何で俺が知らないの…?
そんなことばかり考えてしまう。
「ま、いろいろあるんじゃこれが」
「…」
なんで…
買いたいもんまで秘密で、
俺と一緒に行動しなくなったのか。
誤解だったのか…?
俺ってこんなに自惚れ激しかったっけ。
ヤバい、顔が引きつってきた。
「っ、あ、そ、そんじゃ!!
俺先生に呼ばれてたんだった!!ごめんな!!」
俺は明らかに分かるほど顔を紅潮させて、どんぶりとトレーをひったくるように片付けて席を立った。