第八話 | ナノ
ちょっとコナ、かけてみっか…

「俺さ、もうバイトやめようかなって思ってたんだ」
「…」

珍しく驚いた顔。
俺達はいつだって一緒だった。
高校に入るのにも、こいつは親に逆らってまでここに入ったし。
フランスのホームステイも俺に感化された、と言って入ってきた。
バイト先だって俺が最初に決めてた。
思えばありえない。
兄弟だって絶対こんなに一緒にいないって。
今までだって周りから散々誤解されてきたんだ。
それでもこんなに一緒にいるてことは…。
俺の胸に巣食い始めたこの想いは…。

「もともと欲しいモノがあったわけじゃないし、最近やたら疲れるし。
ほら、もうすぐ春休みだからさ、せっかくだし遊びたいんだ…お前とも」
「!!」

ちょっと顔が赤く染まった。
もう少しだ。

「一緒にやめようぜ!お前だって仕送り困ってないじゃん」

俺は仁王を見上げて二コリと笑った。

「…そうか」

そして俺から視線を外し、咳払いをした。

「俺はまだ辞められない」
「――え」

肩透かしをくらった気がした。
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