謙也くんと



息を吐くと白くなり消えていく。鼻の先が冷えて痛い。たまらずマフラーを立てて鼻までを覆い隠し、両手をポケットに突っ込む。

(寒い。)

「白石、」

ザザーンと波が打ち付けては引いていく。それをぼんやりと見つめながら謙也の声に耳を傾ける。

「寒いなぁ…」
「…」
「なぁ、白石」
「なに」
「好き」
「何、今更やん」
「そうかも」

ハハ、と渇いた笑いと共に伝わるじんわりと胸にしみる言葉。それは俺の中の何かを溶かしていくように体中に染み渡って、内側から熱くなっていく。

「帰ろうか」

握った手から伝わる温もり。
手から俺の鼓動の速さが謙也に伝わってしまうのがなんとなく怖かったけれど、謙也もきっと同じくらい速いんだろうなとか思ってみたら、なんだか可笑しくなってきた。

「風邪ひかんよう手洗いうがいしいよ」
「阿呆ぬかせ。中3になってやり忘れるかい」
「謙也ならやりかねん」
「ガキちゃうわ!」


君の手、僕の心
君の手、僕の心



2010.12.12

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