「バレンタイン?」
「そうだよ。ここに来てから毎日テニステニステニス…
女の子たちと戯れたいよ!!」
「戯れたいとか言うな不審者」
ベッドの上でケータイを弄っていたらどこからともなく千石が現れた。あれ、ねぇここって全室オートロックじゃないの?俺のとこだけ壊れてんのかな?そうだよな壊れたんだよな。じゃなきゃ千石が入ってこれるわけねぇじゃん。

「でも残念ながら女の子がいない…」
「そうかそうか飢えたんだな。よーしそのまま消滅しろ」
「だから俺思いついたんだよ!丸井くんがいるじゃんって」
「…は」

俺がいるからなんなんだよ、と言う前に千石が俺の耳元に口を寄せて話し始めた。

「丸井くんが作ってよ」
「やだ」
「えー幸村くんにはあげてたのに?」
「幸村くんは特別なんだよ」
「いいじゃん俺も君の特別になりたい」
「お前にゃ無理。役不足。」

千石の顔を睨み上げると、笑顔が目の前にあって、瞬きした次の瞬間には唇に温かい感触。
しかしそれは一瞬にして離れる。

「コレで我慢するよ」
「っまじ信じらんねぇ!!何なんだよお前!!」
「恥ずかしい?」
「ちが、」
「真っ赤な顔で言われても説得力ないなぁ」
「箪笥の角に小指ぶつけて死ね」

あははと笑いながら出ていく千石。それを見た後、枕に顔を埋める。

ー正直、よくわかんなかった。
だからしっかりした感情が理解できないと決め付けた。またそれも驚愕のせいだ、と逃げ道を作っておく。

後で堕ちてしまわないように。



今宵、貴方と恋に堕ちる
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