学パロ/ナルト視点 はじめての温度 「うわー……すげぇ暗い雲だってば」 口を動かしたら、白い息がはぁと出た。マフラーもしているしみみかけもしてるけど。今日は夕方に近い今でも変わらず雪でも降るんじゃないかってくらい寒い。 「ウスラトンカチ。前、見ろよ」 俺の隣で歩いているサスケが同じく白い息を吐き出して、話しかけてきた。 「だってさ、ほら雲!キモチ悪くね?」 サスケも寒いのか、鼻の頭を赤くさせている。黒い瞳とかち合ったらどきりとして、慌てて頭上の雲を指差した。 「雪降んのかなぁー…傘ねぇよ」 歩きながらずっとどんよりした雲をまじまじと見つめる。決して俺は横を向くことなく喋り続ける。……だってサスケの視線がこちらをずっと捉えているようで、横を見れない。それを意識すると、寒さと反比例して段々顔が熱くなってきた。 「…お前、ほんとわかりやすすぎ」 クス、と笑う声が隣から聞こえたので、振り返ってみる。しまった、今顔が赤いんだったと後悔してももう遅い。サスケの綺麗な顔が笑っていたのを見て、心拍数がまた上がり、また顔が熱くなる。 「そんな固くなる必要ねーよ」 サスケは俺の頭にぽん、と手を置き、そして髪を撫でる。 「せっかく付き合って、まだ数日しか経ってねぇだろ」 俺、まだ全然お前に手出してねぇし サスケが俺に向かって優しく囁くと、いたたまれなくなって俺は顔を両手で塞ぐ。 (………ちょー恥ずかしい) なんでわかってたんだろう。そんなに、俺ってわかりやすいかな。まぁ、あんだけ顔赤くしてカチコチだったらサスケくらい鋭い人はわかるだろうな。 そう。 サスケと付き合って、まだ数日しか経っていない今日この頃…。 サスケとは、昔から友達として付き合っていた。お互い親友と呼べる仲で、いつも一緒にいたけど。その関係にいつからか、俺は違和感を感じていた。サスケの側にもっといたいと自然に、飼い主に懐く犬のように思っていた。そんな感覚に過ぎなかった。そんなある数週間前、サスケはずっと俺が好きだったと言ってくれた。その時本当に驚いたけど、嫌じゃないって思ったんだ。サスケのことが好きなのか自分でよくわからなかったけど、違和感を感じていたのはこれなのかもしれない。自分はサスケが好きなんじゃないか、と。 サスケは返事はゆっくりでいい、と言ってくれて俺はサスケのことをじっくり考えてみた。それで、わかったんだ。俺がサスケの側にずっといたいと思っていたのは、親友の類のものなんかでもなく、飼い主に懐く犬のような感情でもなかった。俺は知らぬ間に、サスケのことが好きだったみたいだ。それを必死に告げると、サスケは本当に嬉しそうな顔をして抱きしめてくれた。 そんなこんなで、見事お付き合いをした俺達。当の俺は…恋人同士としての関係にすっかり緊張していて。俺なんか女の子とも付き合ったこともないし、本当に初めて。…なんか照れくさくって、恥ずかしくって。 一緒に並んで歩くのすら、自分じゃないみたいに恥ずかしい。だから顔もまともに見れなくて… 「…だ、だって恥ずかしい…ってば」 「いつもの強気なナルトらしくねぇな」 穏やかな声で話してくるから質が悪い。 「…そんなんじゃ俺、前進めねぇんだけど」 一緒に歩きたいって思ってくれてるのは、素直に嬉しい。けどだってこれ、結構恥ずかしいってばよ。後から追い付くから、サスケは先行ってて貰おうかな、と思ったその時。 「キスとセックス……いつになったら出来るんだ?」 ………… はい? 今、えーっと、あの…その… なんか、ちょっと大人な単語が聞こえて、手をどけるにはわけにはいかなかった。 サスケは、そういうことしたいって思って…たのか… いや、前に進みたいってそういうことなのか、とナルトは理解した。 「…なんて、今日はこれで我慢してやる」 次の瞬間、くいっと手を引かれて手を繋がれた。 それだけでも心臓がうるさく高鳴った俺は、赤くなっているであろう顔が心配だった。 「真っ赤だな、顔」 「…うっせぇってばよっ」 誰のせいだよ。 クスクス、とさっきのように笑われて、もうどうにでもなれ、と投げ遣りに思った。 「…大人なことはこれから俺が教えてやるよ、ナルト?」 厭らしい目をしたサスケが、俺の目をしっかり捉えて指を絡ませた。 指が繋がっているところから伝わる熱も、心地よくて熱い。気付けばいつの間にか、あんなに寒かったさっきまでの時間はこんなに熱くなるまで自分はサスケに弄ばれていたらしい。 そんな俺はまず、サスケに弄ばれないように、照れ臭さをなるべく感じないようにしなければ、と密かに決心した。 |