待ってろ 「………サス、ケ」 「んな驚くかよ、ドベ」 大人びて整った顔。漆黒の髪。大きい背… たった一年会ってないだけなのに、その容姿や声全てに胸が高鳴って、泣きそうになる。ずっとずっと想い焦がれていた人が目の前にいる。 「サスケ…っ何…でっ…」 必死に泣きそうになるのを堪えてサスケの顔を見ると、サスケは目を逸らして俺の腕を掴んできた。 「…ここじゃなくて、近くのカフェ行くぞ」 ぐいぐいと俺を引っ張っていく手。背中を向けるサスケが、どんな表情をしてるのか見たくなって堪らなかった。久しぶりに会えたんだから、顔がもっと見たいとか冗談混じりに言ったらサスケは困るのだろうか。そらそうだよな。 俺達、もう前のような関係じゃないんだから…。 サスケが連れてきたのは駅前のおしゃれなカフェ。 サスケの雰囲気に合うお店だった。 「ご注文はお決まりですか?」 大人しく席に着くと、定員さんは素早くメニューを持って俺達のところへ来た。 「とりあえず、コーヒーと…ミルクティーで」 サスケはこちらを一瞬ちらりと見ながら定員さんに注文をした。俺がカフェへ行くたび、コーヒーを飲めないからいつもミルクティー頼んでたの、サスケはまだ覚えててくれてたんだ… そう思うと、嬉しさに胸が締め付けられた。なんで、こんな。自分はサスケに酷いことをして、きっと振られたも同然なのに。しばらく沈黙が続くと、サスケが口を開いた。 「…待ってろ、って言うつもりだった」 「え…?」 サスケは真剣に俺の目を見て言ってきた。そのことにも胸が高鳴る自分は、本当にこの目の前の男を前にして冷静でいられないのだろうと頭の片隅でぼんやり思った。 「…本当はあの日、お前に待ってろって言うつもりだったんだ」 あの日、と聞いただけでもその事がわかってしまう程、自分達はその言葉で充分だった。でも今更その事を口にするサスケは何を考えているのだろう。きっちりした性格だから、もう終わりにしようという話の前フリなのだろうか。 「でも、…付いて来るな、って言ったとしても、俺を待つことなんてなかったよな」 「…」 サスケは自嘲気味に笑う。 (…なんでそんな悲しい顔すんだってば) 違う。 ……違う……。 俺はずっと、待ってたんだってばよ?サスケのこと… 「ちがっ、うってば……っ」「…ナルト?」 ついに堪えきれなくなった涙が落ちて、テーブルを濡らしていく。 「…っ俺は、サスケの言うこと聞かないでわがまま言ったから…もうサスケは俺のことどうでもよくなったんだって…勝手に解釈しても…!ずっと!」 「ずっと……待ってたってば…」 ずっと、ずっとずっと消えなかった。 この一年間、ずっとサスケのことだけを考えてた。 もうサスケが俺のことをどうでもよくなっても。 「サスケのことを想わない日なんてなかったってばよぉ……」 声が裏返りそうになるのを必死に堪えて、情けない声で言った。もう戻れない関係だとしても、伝えておきたかった。 「……バカ。ドベ。」 「………」 俯いたままサスケの声を聞く。それは明らかにため息が混じり、うざそうな声だった。 やっぱりそうだよな。 俺にこんなこと言われたってサスケは…… 「ほんっとに…俺を煽りやがって」 次の瞬間、ぐいっと頭を押された。 |