上忍設定/甘々/ナルト視点 たった俺だけの 「………何だ?」 暗号のような、文字化けしたような数字と記号。自分の脳内では処理できないダルさもあり、昨日の情事のダルさもあり…。だがしばらくその文字から目が離せないでいた。 つい、昨日の出来事。 愛しい彼が、めでたく誕生日を迎えた日、1日中一緒にいて、どこかに行くわけでもなく、何をするでもなく。ただただ寄り添って、他愛のない話をして。プレゼントも、きちんと渡して。それから…夜は愛を確かめ合って。 その状況から目覚めての今。朝は隣で眠っていたのだが自分は現在昼の時間まで眠ってしまっていた。今日はたしか、彼は任務があると言っていたから、今隣にいないのだろう。そこに疑問は持たない。疑問を持つのは、テーブルに置いてあった置き手紙。 そこには何やら暗号のようなもの。 「……?」 何かの日付?とも思ったが違う気もする。 色々考えはしたが、面倒くさがり屋の彼はわざわざ文字にして伝えたりはしないだろう。いつも要件があれば直接、口で伝えてきたことを思い出した。 では何故口で伝えなかったのだろう…?時間がなかったのだろうか?いや、彼はそんな計算はしないだろう。誰かに聞いてみようとも思うが今日は自分は任務はないし、昨日の情事のおかげで腰が痛く、歩くのもつらい。 「…帰って来たらサスケに聞いてみよう……」 自分も何かこの暗号のようなものに興味を持ってしまったので、知りたくなってしまった。 *** 「うぅ〜ん………?」 夕方。あれからちょくちょく、この暗号と向き合っていたがさっぱりわからない。 もしかして、わざとわからないようにしたとか?まぁ、俺のこの小さい頭脳でわかるはずがないだろうと判断したあの男にはムカつくが、ごもっともなことで。それを認めてしまう自分がいるのもどうかと思うが… 「とにかくこれ、意味わかんないってばよ……」 もう眺めるのにも疲れて机に突っ伏していると、ドアが開く音がした。 「…ただいま」 「さっすけぇぇぇー!!」 一気にだだだっと玄関まで走っていったら、いきなり何だという顔をされた。 「これ!!意味わかんないってばよ!」 ビシッ、と音が出るくらいその男、サスケの顔の前に紙を突き出した。 「…ああ、やっぱりまだ解けてなかったのか」 「やっぱりって何だってば!答え教えろー!!」 しれっと答えられ、玄関を上がってリビングに行ったサスケに大きな声を出して反論してやった。 「大体お前こんなん作らないで直接口で言うじゃん!」 「…メッセージだってよくわかったな。昔はそれすらもわからなそうだったが」 「きー!てめぇ、昨日のあっまーいサスケはどこ行ったんだってばよっ!つーか俺だって成長してんだってばっ!」 「…何だ、厭らしい俺が良かったか?」 「べっ別に…!ていうか厭らしいって自覚あったのかってば…」 意地悪く笑ったサスケに罰が悪くなり、目を反らす。おちょくったつもりが、墓穴を掘ってしまった。いや今もかっこいいけど、その時のサスケの方が… かっこよかったなぁ、なんて思ってしまったことは………秘密だ。 「まぁお前も俺なしじゃ生きてけない体に成長し」 「やっぱ最悪だってばこの変態っ!」 着替えているサスケにお構い無く正拳突きをサスケの背中目がけて突こうとしたが、スルリとかわされた。 「…ヒント。お前の好きな厭らしい俺とは違う。真剣に伝えようとしてる」 「好きなんて一言も言ってねーってばよ!ていうか、そんな真剣なら今ここで…!」 「それが出来たら苦労してない」 「え…」 どこか寂しそうに、照れくさそうに顔を反らすサスケに愛しさを感じてしまった。でもそれ程サスケが真剣なんだ、と実感させられる。もう一度紙に書かれた暗号を見つめる。だがナルトの思考は考えすぎていたため、停止している。サスケのその表情の理由を知りたい。─…ね。 俺にどんなこと言おうとしてたんだってばよ─? 「う…」 分からないもどかしさと、サスケが自分に伝えようとしていることを知りたくて堪らなくて涙が溢れる。 「ナル…!?」 いきなり泣き始めたナルトにぎょっとしてサスケは俺の頭を撫でくれたけど、涙が止まらない。 「…っ」 「わ…!」 次の瞬間側にあったソファーにいきなり倒されて、サスケに抱き締められた。 「サス…?」 「…悪い。泣かせるつもりで考えたわけじゃねーんだ…」 ぎゅ、と強く包み込むようにサスケに抱き締められて俺の胸はうるさいくらい高鳴った。 「そ、そういうわけじゃ…ただ…わかんなくて……」 おろおろして返事を返すと、サスケは控えめな目で俺を見た。 「…本当にわからねぇか?」 「…え……?」 その目はどこか甘えたそうな、でも俺を射ぬくような熱い視線。まるで気付いてほしいかとでもいうように。 「…もう一つヒント。…俺がもし最期を迎えるとき、真っ先にお前に伝えたい、これを」 「縁起でもないこと言うなってばよ………」 しゅん、と顔を俯かせる俺に微笑んでサスケは言う。 「…お前なら、俺がまだ昨日言ってないことを言えって言いそうだから、わかると思ってたんだがな」 「まだ…?」 さっきのヒントといい、更にわからなくなってきた。 「…じゃあ…もう言う。 ナルト、誕生日祝ってくれて、」 「!」 その言葉まで止めるサスケに導かれて、はっとした。 「わかっ……た!!わかったぁ!!」 「やっとかよ…」 涙を浮かべて俺は笑顔を浮かべた。そんな俺の涙をサスケは指で拭ってから瞼に一つキスをすると俺は、あ、と何か思い出したかのように声を上げる。 「何だよぉ〜サスケこれだけのためにこんなん作ったの!?あはははかーわいー」 「うっせ…」 それなら口で言った方が早いじゃーん、と無邪気に笑う俺にサスケは照れくさくなったようだ。 「ていうか、こんな伝え方あったかぁ?」 「お前…やっぱり知らなかったのか…。ま、これが解けないって思ったから数字暗号にしたんだがな」 はぁぁ、と吐かれるため息にとりあえず笑い飛ばす。でも逆にここまでやる位恥ずかしかったんだなぁと吹き出してもみる。 「本当サスケ不器用だってばね〜…でもサスケ…、俺すげぇ嬉しい!!」 「そうかよ。……じゃあ、最後にもう一つ。」 えへへ、とまた笑顔を向けると今度は意地悪く笑い、サスケは俺の耳に近づいた。 「……愛してる」 耳元で低く囁いたあと、俺は状況を把握してボンッと音が鳴りそうな位顔を真っ赤にさせていたと思う。 「…そういう言葉はさらっと言えるんだってばね…?」 「当たり前だろ。俺がいつもナルトに言いたいんだから…」 「…だからって耳元で囁くな…」 そう言うと照れ隠しにサスケの胸に顔を押しつけた。 そしてサスケは微笑みながら、俺を強く抱き締めた。 ね。 お前の言いたいこと、 わかった。 すげぇ不器用な伝え方 だけど、俺には充分すぎるくらい伝わったから。 だから、これからも。 俺にだけの暗号を送ってよ。 ♪1/9/9/2/*/4/#/#1/1/1/二/ノ/宮/和/也 |