「おはよーございまー…とぉうっ!」
事務所の扉を開けたと同時に何かが飛んできて間一髪のところで避ける。
勢い良く飛んできた何かは、壁にぶち当たり床にばさりと落ちる。
落ちたそれを拾い上げて確認すると
「卒業…アルバム?」
それはこの辺りでは有名な進学校の名前が入った卒業アルバムだった。
「お、来たか椎葉」
資料が置いてある棚を漁っていた赤月が振り返る。
「来たかって…なにしてんの?」
「見ての通りだ」
「へそくりの隠し場所を忘れたの?」
「違うわ!!」
第一俺がへそくりの隠し場所を忘れる訳ないだろうがと言いながら赤月は再び棚を漁りだした。
「というかなにしてんの?」
当然の疑問だ。
「前に人探しを頼みにきたゴツい奴いただろ?」
「あぁあのテリーマンみたいな人?」
確かに数年前にそんな人が依頼に来た。
彼が探して欲しいという人物は見付からなかったが…。
「で、そいつの情報をよこせと言われてな」
「誰に?」
「山城に」
「山城さんが?」
山城というのはよくここを訪れる人物だ。
依頼をしに来る時もあれば情報を買いに来る時もある。
(ただ暇つぶしの為に来ることもあるのだが)
「なんでまた」
「さぁな」
投げやりな答え。
分からない人というのが椎葉の山城へ対する印象だが余計に分からなくなった。
「で、いくらで売った訳?」
赤月が情報をただであげるわけないからね、と言うと赤月は棚を漁ったまま手だけで数字を示した。
「…山城さんもそんなに出してくれたんだ?」
「個人情報だからって言ったら納得してたぞ」
「あの人案外馬鹿なんだね…」
まぁ普段から危うい言動や行動してるような駄目な大人が頭いいっていうのも嫌だけど。
一通り失礼なことを考えたところでさっきの卒業アルバムを手に持ったままなのを思い出した。
「ねぇ赤月、コレ見ていい?」
一応確認を取ると赤月は、おーとだけ答えてがさがさとファイルを捲っている。
椎葉はソファに座ると卒業アルバムのページを適当に開く。
目当ての人物はすぐに見付かった。
今より少しだけ若い赤月が無表情で写っている。
ブレザーの学校なようでネクタイをしているが、まるで似合っていない。
むしろリボンの方が似合うであろう。
「赤月ってさ、制服似合わないって言われてたでしょ」
「…それはお前もじゃねぇのか?」
半笑いで尋ねると不機嫌そうな声が返ってきた。
「女子の制服とか着させられたりしなかった訳?」
「何度か頼まれたけど全部笑顔で断ってた」
「私は男装頼まれたらやるけどね?」
「女装と男装の恥ずかしさは桁が違うだろ」
「そうかなぁ」
金が絡んだら喜んで女装してるじゃんという言葉は言わないでおいた。
「学生時代のエピソードとかないの?」
「女王って呼ばれてた」
「うわ…」
「女王様って呼んでもいいのよ?」
「黙ってくれるかなぁ?」

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