弱々しい(吉川) | ナノ



いつもはチョークや黒板を指したりする指揮棒みたいなのを持っている長い指がゆるゆると私の頬をなぞる。
いつもならすぐにその手を振り払うけどクラス全員分のノートを持っているせいで振り払えない。
なら避ければいいんだけども40冊近いノートの束は結構重くて、非力な私は教室から理科準備室に運ぶまででよたよたしてしまってたので先生から1歩距離をとるのも容易ではなかった。
そのまま頬に手を当てられて何分か経った。
いい加減重いノートを置きたくて「先生」と声を掛ける。
いつもならすぐに返事が返ってくるのに今日は黙ったままで。
「先生?」
どうしたんだろうこの人。
いつもと違う先生に内心戸惑っていると、ようやく先生が顔を上げた。
眼鏡越しの目が揺れている。
まるで捨てられた犬みたいな…先生は犬なんて可愛いもんじゃないけど例えるならそんな感じで。
とにかく、いつもと違いすぎる。
バレないようにため息を吐いて
「どうしたんですか?」と尋ねる。
先生はまたうつむいてしばらく黙ったままだったけどゆっくり顔を上げた。
ようやく開かれた口から出た言葉は
「俺のこと、好きですか?」だった。
「…好きに決まってるじゃないですか」
溜め息混じりにそう言ってノートを端の方に置いた。
そんな情けない声でしかも眉間にしわ寄せて泣きそうな、苦しそうな顔されたらいつもみたいに「なに言ってるんですか?」ってはぐらかせないじゃないですか。

それはとても弱々しくて
(抱き締められたから強く抱き締め返した)
(これは今日だけだからね先生)




疲れて弱ってる先生となんだかんだでほっとかない陽菜。
今回は付き合ってる設定。
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