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「……………の?」
弱々しい小さな声。
「ね…ど……の?」
どんどん声が近付いて来る。
「ねぇ……なの?」
来ないで

「ねぇどこなの?」

あの後、なにも起こらないじゃないかと膨れっ面をしながら言う恭平を引き摺って帰宅した。
家に着いて携帯を確認すると不参加だった親友からメールが一件。
なんだか酷く疲れていたので返信はお風呂の後でいいか、と考えてシャワーを浴びた。
案の定というかメールのことなどすっかり忘れて朝を迎えてしまい、学校で陽菜に騒がれてしまった。

「はぁっ…!」
あの日から同じ夢を見る。
弱く小さな声がどんどん近付いてきて
背後ではっきりと聞こえたと同時に必ず目が覚める。
「……」
ベッドの近くのテーブルに置いてあるペットボトルに手を伸ばす。
冷たい緑茶が喉を通る感覚が妙に落ち着いた。
「…どこにいるの…ねぇ」
ペットボトルをテーブルに戻して呟く。
「そもそも誰なのよ…」
こぼれた言葉が部屋に溶ける……
「あれはアリス」
ことはなかった。
「!?」
突然聞こえた声に固まる。
閉まっているはずの窓のほうから夜の冷たい風を感じる。
寝る前には閉めてた、いや今日は窓なんて開けてないしそもそも鍵がかかってたはずなのに。
ギシギシとした動きで見やった先には
「う…さぎ…?」
二羽のうさぎが月明かりに照らされる窓辺に立っていた。

「やぁ《捜索者》」
左耳が黒い兎が口を開いた。
私はというとなんで兎がここにいるんだとかどこから入ったのかとかなんで兎が喋るんだとか捜索者ってなんだとかぐるぐると頭の中を巡った結果、口から出たのは
「…どちら様ですか?」というなんとも間抜けな言葉だった。