リハビリ
兵長勝手に雨男



生憎の雨だった。空はどんよりと重い雲に覆われ太陽は見えない。ここ数日雨が続いている。
「雨だなぁ。」
「見ればわかるだろ。」
いちいち見れば分かることを横のクソメガネは口に出す。ハンジは俺に言うでもなくまるで自分に言い聞かせるようにもう一度雨だと呟いた。
「これじゃあ、今日は無理だね。明日に延期だ。」
「あぁ。」
部屋からハンジが出るのを確認してもう一度言う。そしてやはり俺も自分に言い聞かせるように呟くのだ。
「雨だな。」

なまえという女がいた。知り合いの班に所属している訳ではない。最近まで存在すら知らなかった女。
「兵長は雨男なのですか?」
「誰から聞いた。」
「ペトラです。」
庭を掃く際に兵長が来ると雨が降り出す、とペトラがボヤいていたらしい。確かに俺が来ると雨が降る(確率が高いというだけだ)。
「私、晴れ女なんです。掃除手伝います。」
顔も名前も知らない女だった。ただ、日課の掃除に顔を見せるだけ。それがなまえだった。
「さすがなまえは晴れ女ね!兵長がいても全く降らない!」
「オイ。」
「これじゃ水不足になっちゃうかもね。」
ただ掃除の合間に二言三言言葉を交わすだけ。大した思い入れも何もなかった。

「お前ら、戻るぞ」
「早く壁に…あら、雨。」
「久々だな。」
ペトラやオルオたちと1ヶ月ぶりほどの雨に打たれる間に本当は気づいていた。今日まで何も知らないふりをしていた。
「兵長、なまえが壁外調査で亡くなったそうです。」
「…そうか。」
その日の掃除は部屋の窓拭きに変わった。
本当は今日、持ち帰ることのできた遺体を燃やす予定だったが生憎の雨で延期らしい。なまえがいないせいかここ数日雨続きだ。
「あ、ここに居たんですか兵長。」
「なあ、ペトラよ」
窓を開けると部屋に霧雨が振り込んできて頬を濡らした。ほどよく冷たいそれは顔の熱を段々奪ってゆく。
「これから毎日窓掃除かもな。」
きっと晴れることはないんだろう。


雨男の憂鬱
20141109
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