戦争パロ第3弾

「やめときなよ。死ぬだけさ。」
「はは、止めてくれるのはアニだけだよ。」
笑顔の眩しい人だった。戦場に行くと決まった時も、この国の戦況が悪くなっても、大丈夫だと笑う人。ちゃんと帰ってくるさ。そう言って握り締められた手はいつまで経っても熱を帯びたままだった。

「ただいま、アニ。」
「なまえ、かい?」
彼は帰ってきたがその目は私を写していなかった。昔のように私を撫でようとする手は虚しく空をきり元の場所へと戻っていく。
「あんた、目を....。左手はどこにあるの?」
ジャケットの左手は内容物を納めていないらしくぶらぶら揺られていた。
「無くなってしまったよ、あっという間に。」
「だから、あんなにやめとけと!」
どんなに責めても彼はただ乾いたように笑うだけだった。
それからは毎日の日課は彼の元へと通うこととなり、自分はなまえの為にできることならなんでもしようと思っていた。好きだったのだどうしようもなく。たとえ自分を二度と写すことがなくても左の腕を失っていても大切ななまえであることに変わりはなかった。
「死にたいなあ。」
「は?」
ぱちゃりと、付近が桶に落ちた。なまえは相変わらず窓の外を眺めていた。
「あんた、自分が何を言っているか分かってるのかい?」
「こないださ、聞いたんだ。」
ふ、となまえの口が歪む。
「身内はさ、早く俺に死んで欲しいらしい。死にきれなかった俺の姿が醜くて恥ずかしいんだと。」
アニ、お前もそう思っているのだろう?何も見えていないはずのなまえの瞳が私を捉える。彼はいつからだったか笑うことは無くなった。私は声は出なかった。
「本当は、体が綺麗なまま帰れたらお前を貰おうと思ってたんだけどね。それも無理なようだ。」
「傍にいるじゃないか。」
なまえの右手を握り締める。昔のようにたくましくはなかったが段々と熱を帯びていった。彼は驚いたようだが、少しだけ笑った。
「アニ、離さないでくれ。すごく怖いんだ。」
「ああ、はなさないよ。あんたの目になってやる。左手になってやる。もう死ぬとか言わないで。」
「そうだね。」
ラジオではこの国は負けたとか、なんとか言ってるが私はそれを悲しいとは思わなかった。
「俺と一緒の墓に入らないか?」
「相変わらずセンスがないね。でもそれもいいかもしれない。」
「アニには昔からセンスがないって言われてたな。覚えているかい?」
ああ思い出したよ。なまえ、あんたもそんな風に眩しく笑う男だったね。


太陽の人
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