またまた戦争パロ


「おい、何泣いてんだ。」
「うっく、なまえ兄、さんっ。」
顔を上げるとなまえ兄さんが不思議そうに覗いていた。
「ジャン....お前もうすぐ8つだろう?男児としての自覚を持て。」
「だって、だって....、俺の父さんが、っいってえ!!」
ポカリと頭を殴られた。なまえさんは俺より10も上で喧嘩が強い人だった。
「お前は女か!そんなんじゃ馬鹿にされるぞ!!」
「い、痛てぇよ!」
なまえ兄さんは殴った頭を撫でると座り込んでいる俺に目線を合わせるようにしゃがみこんだ。
「泣くな、お前は男だろう。それでは大切な人は守れんぞ。わかったか?」
「うん、うん。」
「じゃあ、饅頭でも食うか!美味いやつをもらったんだ。一緒にくおう!」
兄さんが俺の手を優しく引いてくれる。なまえ兄さんの顔は太陽で眩しくて何も見えなかった。

目が覚めると向かいの家がやけに騒がしかった。窓から覗くと沢山の人がなまえ兄さんを囲んでいる。
「母さん、なまえ兄さんは何処かへ行くのか?」
兄さんは学徒動員とかいうやつで国の為に戦うらしい。そういえばこないだ饅頭をもらった時になまえ兄さんは言っていた。俺は槍でもなんでも使えるって、敵を沢山やっつけてくるって。それが今日なのだそうだ。兄さんは二階の窓から覗く俺に気づいたらしく小さく手を振った。
口元がまたな、と動いて見えたから、俺もバイバイと言った。

ジャンと呼ぶ声が聞こえて下に降りると珍しく母さんが悲しそうにしてる。横にはなまえ兄さんのお母さんもいた。
「なに?どうしたの?」
「お向かいのなまえさんね、立派に亡くなられたそうですよ。」
「は?」
「いつもなまえさんと遊んで下すってありがとうねえ。」
よく意味がわからなくってもう一度確認すると、なまえ兄さんは死んだらしい。これは名誉あることらしくて、しっかり国の役に立ったんだと言っていた。
「そ、そうですか。」
「ジャンさんもなまえさんのようになってくださいね。」
なまえ兄さんのお母さんは笑いながら出ていった。
「兄さんのお母さんは寂しくないんだろうか。」
「いいえ、きっと寂しいでしょうね。」
外に出てあの日なまえ兄さんに殴られた場所にあの日のように座り込んでみてもなまえ兄さんはあの日のように来てくれなかった。兄さんは戦場でも泣かなかったのだろうか。母さんに会いたい、とか好きな人に会いたいとか思って泣かなかったのだろうか。
「男は、泣かねえ。」
なまえ兄さんは男は簡単に泣いちゃいけないって言ってた。だから俺も泣かねえ。
でも自然と涙は溢れてくるようでボロボロ涙を零した。
「兄さん、兄さん。」
あの日窓から覗いた風景を思い出す。小さく手を振ったなまえ兄さん。またな、と笑ったなまえ兄さん。
またなっていつのことだろうか。いつまた兄さんと饅頭を食べれるのだろうか。ひとり地面に座り込みながらあの日なまえ兄さんと交わしたまたなの意味を噛み締めた。


またねの定義について
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