「なまえ!!」
どこかで君の声がした気がした。あれ、ここどこだっけ。…あ、そっか、アタシ壁外調査に出て、それでそれで。…どうしたんだっけ。そうだ左足なくなっちゃったんだ。なくなった後別の巨人に両手をお人形見たいに千切られちゃったんだ。私の両手、朝まであったのになあ。朝までフォークを持って髪を結んで。ちゃんと、あったのになあ。
「なまえ!!オイ、しっかりしろ!オイ!!」
エレン?やだなあ。私とエレンは班が違うから逢えるはずないのに。私死んじゃうから神さまが最後にプレゼントしてくれたのかなあ。あぁ、そっか、私死ぬんだ。
昨日まであんなに笑って、泣いて、怒って。エレンに恋して。普通の人間の暮らしをしてた。女の子だったのに。壁の外に出れば兵士。巨人に食われて私死ぬんだ。
呆気ないな。まだやりたいこと沢山あった。沢山あったよ。
「なん、で、エレ…泣くの」
ポタポタと横たわる私の頬を水滴が濡らした。
「泣いてなんか、ねぇよ…」
エレンが私の事で泣いてくれてるなんて私自惚れちゃうよ?エレンの頬を伝う水滴を拭き取ってあげたいのにそれをする腕はない。改めて私は死ぬんだって痛感。
エレン達は壁の中に戻ったらまた日常に戻るのだろう。また仲間達と笑いあうのだろう。でも私は?死んだ私はどうなるの?エレン達との記憶から切り取られて過去に埋もれていく。彼らの日常にもう私はいないのだ。否、いることはもう二度とできない。
「死に、たくなかった…なあ。」
ポソリと、自然にこぼれた。エレンが顔を歪める。
「死なねえよ!!俺が壁に連れて行くから、だから!!」
必死なエレンを見てなぜか、心が安らいだ。なぜ、私がこんなに悲しむ必要があるのか。自分を大切に思ってくれてる人がいた。それだけで、十分じゃないか。それだけで私の心は、救われるじゃないか。
「もう、いいの。もう…充分。」
「何がだよ、オイ!!何が充分なんだ答えろ!!」
私は幸せだった。大切に思ってくれる仲間がいたから。よく生かされた。
ああ、寒いなぁ。なんの感覚もなくなってきた。
「なまえ!!なあ、死ぬな…お願いだ…!」
泣かないでよエレン。もっと笑ってよ。ずっと生きてよ。それで幸せになってよ。
「なまえっ…」
なんでだろう。好き。エレン好き。今更あふれてきちゃう。今更なのにね、好きなの。大好きなの。エレンエレンホントは死にたくないの。まだ十分なんかじゃない。私生きたいよ。エレンと恋人になって笑って笑って。でも、それはねもう叶うことはないから。二度と。だからせめて伝えさせてください。
「エレ、ン好…き。大、好き。」
「俺も…なまえの事が好

───プツン

もう何も聞こえない。


0615

人気急上昇中のBL小説
BL小説 BLove
- ナノ -