某戦争アニメ影響作品not恋愛
モブ出ます。

「みょうじさん。」
「おう、エレン来てくれたのか。」
みょうじさんは俺の声を聞くと、こちらを見て笑った。やけに騒がしい人垣を抜けて彼は俺の傍まで歩いてきた。
「見送りに来てくれたのか?」
「あ、はい!今日がその日だと聞いて....」
「そうか、ありがとな。」
そういって頭を撫でてくるみょうじさんは今日でこの地を離れお国のために戦ってくれるのだそうだ。
「お、俺はもう子供ではありません!立派な男児です!」
「おお!そうかそうか悪かったな!」
そういうとビシッと敬礼をしてくださった。俺も慌てて敬礼をする。周りの人々は立派だ、万歳と口々に叫んだ。
「みょうじなまえ、お国のために死んでまいります。」
ふと、死んで欲しくないと思った。みんながみんな、あのミカサやアルミンだって死ぬことが国の為だって言ってた。でも、死んだらおしまいじゃないか。死んだらみょうじさんは死んでしまうではないか。
「エレンしっかりミカサを守れよ。」
「はい!」
笑顔が脳裏にこびりついてとれない。俺も人ごみにまぎれ万歳万歳と何度も叫んだ。
「おばさん、みょうじさんはいつ帰ってきますか。」
「さあ、あの人はお国のためにお働きになられてるから....でもきっと帰ってきますよ。」
寂しいです、そう呟くとおばさんは笑った。
「エレンさんもなまえさんのように立派になりなさいね。」


戦争は終わったがみょうじさんは帰ってこなかった。終わる前にみょうじさんの奥さん宛に手紙がきて、それによるとみょうじさんは名誉ある死を迎えたらしい。あの日、みょうじさんが出陣したときのようにみんな立派だ、万歳と叫んでいたけど俺は泣いた。どうしてもあの日と同じように万歳立派だとは思えなかった。おばさんは泣きながらやっぱりみんなと同じように立派だ、万歳と叫んでた。
「みょうじさんは帰ってこないのですか。」
戦争の終わった日、おばさんはまた泣いていた。平和が訪れたのにみょうじさんはもうこの平和の中にはいないのだ。
「ええ、ええ、とても淋しいですね。」
戦争が終わった途端みな泣くのだ。なんで死んだのだとか、死んだら意味が無いとか。思っていたならみょうじさんを引き留めれば良かったのに。あの日死んだらいけないと止めれば良かったのに。でも引き止められなかったのは俺も同じだった。
「エレン、美味しい甘味があるんだ食べるか?」
いつだったか一度縁側でみょうじさんと甘味を食べたことがあった。このときの甘味はそれはそれは高価なもので、あまり俺の家では食べられないものだった。ミカサは家で寝ていたから内緒だ、と二人で食べた。
「俺もみょうじさんみたいにお国のために働きたいなあ。」
それで沢山敵を倒すんだ。そういうとみょうじさんは笑って俺の頭を撫でた。
「エレンは死ぬな。」
俺はきっとあの日の笑顔を忘れない。

「おばさん泣かないでください。」
みょうじさん、みょうじさんの大切な人が泣いてますよ。悲しんでますよ。俺もあの日、みょうじさんが俺にそう言ったように、みょうじさんも死なないでくださいって言えばよかっただろうか。そうすればみょうじさんは俺は死なないよと溢れるような笑顔で笑ってくれただろうか。あの日食べた甘味の味はもう思い出せなかった。
「みょうじさんいつ帰ってきますか。」
後悔だけは俺の心にずんずん染み込んでいって心は真っ黒に染まった。
縁側に夕日が差し込んで真っ赤に光る。
「もう、なまえさんは帰ってきませんよ。」
きっとあの甘味の味は二度と思い出せないのだろう。


万歳、君は立派だった
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