「アルミンって物知りだね。」
「座学トップだなんて....尊敬するよ。」
座学の成績が貼られ皆が一斉に僕を見て言った。体力は皆無ってほどではないが無いに等しい僕の唯一の長所だった。
「アルミンやっぱすげえよ。」
「エレンはもっと勉強するべき....」
隣で二人がぎゃあぎゃあ言ってるのを横目にもう一度成績をみた。何度見てもトップは僕だった。
「アルレルトは馬鹿だよ。」
きた。いつもこの結果が出たとき、一人だけ僕を馬鹿だと言う人がいた。座学は毎回どべから五位内を争うくせに運動だけはあのミカサにも引けを取らない女の子。
「なまえ....。」
「なんでアルミンが馬鹿なんだよ!」
「馬鹿だよ。アルレルトは馬鹿。」
なまえはジャンやマルコとよく一緒にいた。そのくせエレンとも仲がよく、二人でバカ騒ぎをしてる。言葉は悪いが馬鹿だ。コニーや、サシャに負けないくらい。いつも笑っている元気で馬鹿な女の子。100人に聞けば100人がそういうだろう。なのにこうやって僕を罵るときだけ、ひどく冷たい目をしていた。
「はは、なまえには言われたくないな。」
「そーかもね。」
ひどく冷たい声で、そう言うともう一度張り紙を見つめた。
「....アルレルトは馬鹿だよ。」
やっぱりその声は冷たかった。

解散式の夜も、調査兵団になると言った僕に冷たく言った。
「アルレルトは馬鹿だから駐屯兵団くらいにしたら。そしたら」
「....エレンもミカサも行くんだ。二人の足でまといにはならない。」
なまえのくりくりした目がスッと細められた。ああ、この目だ。たまに僕をみるこの目がひどく怖かった。
「アルレルトは分かってない。」
それきりだった。

なぜこんな時に彼女の事を思い出すのだろう。自分がもうすぐ死ぬからだろうか。それならもっと楽しい思い出を思い出したかった。
「アルレルト!!」
「え、なまえ?」
「ガスは、もうないの?!」
「それは、」
彼女は舌打ちして自分のガスボンベをはずしていく。それを眺めながら、そういえばなまえは明日からジャンとマルコと一緒に内地だっけ、とか考えてた。
「私はあんたの残りのガスで生き残れる自信がある。だから使って!」
「でも....!」
「あたしの運動神経知ってるでしょ。ガスなんてなくってもこんな壁登れるよ。」
それは無理があるよ、と言おうとしたときにずっとガチャガチャやっていたなまえが立ち上がった。
「エレンに、こないだ借りたお金は明日返すって言っといて。あとミカサにはテーピングありがとう、今度街に行こうって。言って。」
「なまえ....エレンは、」
「ジャンとマルコには、明日何着て行くか聞いて。」
「それは制服だと思うよなまえ....。」
そっか、と小さくつぶやいた彼女はカタカタと震えていた。
「死亡フラグばっかりだよ。」
「その方が生き残れそうでしょ?」
そうだね、とは言えなかった。僕は泣いていた。だってそのボンベは、
「エレンとミカサと一緒に調査兵団になるんでしょ。」
「....うん。」
「外の世界、行くんでしょ。」
「....うん、行きたい。」
「だったらここで死ぬな!」
背中をバシバシ叩いてくる彼女も泣いていた。なまえはあのくりくりした目をスっと細めた。でも、昔みたいに怖いとは思わなかった。スっと、僕の頬に指を這わせ僕の涙を拭った。
「さよならアルレルト。」
僕は彼女から目を背けた。さよならはどうしても言えなかった。
「馬鹿だなあ、アルミンは。」
彼女の姿はもう見えない。

その日ジャンは泣いていた。エレンは囚われてここにはいない。ミカサも心ここに在らずという感じで。僕はというと、なまえのボンベを持ってたっていた。ボーッと。
「なまえが、帰ってこねえ....っ。」
死体はなかった。ただ帰ってこない。もしかしたら死んでるのかもしれない。でも、どこかで生きてるのではないかと思ってしまった。
「なまえにさ、聞いたんだ。」
横にいたコニーがふと呟いた。
「あいつ、お前のことバカバカ言ってただろ?だから、どうして馬鹿って言うんだ、ってどう考えてもお前のが馬鹿だろうって。」
コニーを見ると相変わらず俯いていた。泣くのを必死で堪えているようだったのだ。
「アルレルトは私がアルレルトを好きだって気づいてないから。ってさ。恥ずかしくて名前も呼べないって言ってたぜ。」
何も言えなかった。馬鹿だなあ。僕は馬鹿だ。でもなまえはもっと馬鹿だよ。僕の気持ちに気づかなかっただろう?なまえは僕より頭が悪いからもっと馬鹿だよ。だから僕の勝ち。なーんて訳のわかんないこと言ってももう笑ってくれる人はいない。そんなことない、なんてアルレルトのほうが馬鹿だってプンプン怒る人はもういないんだ。

でも、僕はなまえが帰ってくるって信じてるし君が死にたくないからって乱雑に立てた沢山の死亡フラグだって役に立ってると思ってるから。ここで、待ってるね。そしてなまえが帰ってきたらボンベを返して言うんだ。ありがとうって、やっぱりなまえは運動神経がいいから帰ってこれたね。って。
そして優しく抱きしめていう。好きだよって。
だからもう一度僕の名前は呼んでおくれよ。


からっぽのボンベ
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ただの妄想の垂れ流しのリハビリ文。
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