現パロ

ガチャリ、と戸は開いた。きっとエレンだ!
急いで音の元へ駆け寄ると、そこにはやはりエレンが少し疲れたように座って靴を脱いでいた。
「ただいま。」
おかえり!と言うとエレンはハハッと乾いた笑いをしながら横を通ってリビングに向かっていく。相当疲れているようだ。急いで戻ると、エレンは座っていた。
「あー、なまえお土産買ってきた」
お土産?ってなんだろうか。
「これ、コンビニのモンブランなんだけどさ。」
うわあ!私モンブラン好きなんだー!指さされた方を見ると、ビニールに入ったモンブランがあった。これは昔から私の好物なのだ。
「お前本当に好きだもんなー甘いもの。」
うん、大好きだよ。そういうと、エレンは何故か泣き出した。えっえっ!なんでなんで!私はどうすればいいか分からずあたふたしてしまう。も、もしかして酔ってるの?
「違うんだ、ただ昔の事思い出して。」
昔ってなんだろうか、学生の時の話?確かにあの時は楽しかった!でも今も楽しいよ?こうしてエレンと結婚して、二人で生活できて。
「なんで、お前はあの日コンビニなんて行ったんだ…?」
エレンは泣きながら私専用の机の上にモンブランをおいた。お線香の香りが静かに漂ってくる。
「エレンと仲直りしたかったんだよ。」
あの日喧嘩した私とエレンは何故だかいつも笑って流せる話題も許せないくらい気が立っていた。結局私の余計な一言の所為でエレンは家を飛び出していって。私はどうしても仲直りしたかった。だから二人分のモンブランを買って自宅に戻ろうとしてたのに。メールをしてたらトラックが突っ込んできてこの有様だった。
「俺、が悪かっ、た。…なんで、俺、あんなことで。」
泣かないでエレン。背中をさすろうとしてもその手はフワリとエレンを通り抜けていった。
「本当は、俺も仲直り、したかったんだ…っ。それで、お前の好きなもの、買おうと、くそっ!」
エレン、エレン。毎日泣いてる。私の写真の前で毎日泣いてる。携帯のメール画面を開いて泣いてるの。私はその涙を止めることはできない。保護のかけられたそのメールが開かれる度にエレンは毎夜こうやって泣くのだ。
FROM : エレン
SUB : ごめんね(>_<)
──────────────
さっきはごめん
エレンと仲直りしたいよ
モンブラン一緒に食べよう!
家で待ってるからね(^-^)♪


「もう、一緒に食えねえじゃん…。」
あの日エレンを見た。反対車線でこちらに手を伸ばす姿。目はこぼれそうなくらい大きく見開かれていて。
スローモーションでなにも聞こえなかった。そんな世界の中で、たった一つだけハッキリ見えたエレンの口元。
──“なまえ”
モンブランは暑さの所為か少しドロリとなってしまっている。エレンは依然下を向いていて。
エレン聞いて。私ね、死んじゃったけどここにいるよ。離れられないんだ。だから泣かないで。
「ずっと、一緒にいたかった…っ!」
ほら、側にいるよ。こっちを見て。
エレンが金の器を叩いた。部屋には静かな音が鳴り響く。
きっと、これからも私たちはお互いに囚われたままだ。


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