多分幽霊あんまでない。
初のヤンデレ。

ジャンはね、私を見てくれたことがないの。たとえ私と会話をしていたってその瞳に私は写ってないの。私を越えて遠く遠く。知ってるよ、その瞳が彼女を写しているって。でも貴方は知らないでしょう?私が貴方をそっと見つめている事なんて。

「なまえは俺の親友だ。」
同じ地域に生まれて、同じ訓練をして、一緒に笑いあう。全部一緒なのに矢印のベクトルはどうしてもアタシに向いてくれないの。それに気がついたときにはもうどうしようもなくジャンが好きになっていて、抜け出せなくなってた。
「ねえ、ジャン」
「んあ?なんだ?」
あくびをしながら答えるジャンを見てるのも私なのに。ジャンは私の肩越しから除くあの子を見つめてる。
「好きだよ。」
「あ?俺も好きだぜ。大切な仲間だ。」
私はあの子に勝てない。そう気づくのに時間はかからなかった。

この世界は皆簡単に死んでいく。まるで最初からここにいなかったかのようにポッカリとあいた穴は誰かが埋めてゆく。私はジャンの記憶に残りたかった。誰かでは埋められないような、そんな大きな穴になりたかった。
「私が死んだら、どうする?」
ふと、気になってジャンに問いかけると彼は血相を変えて怒鳴った。
「馬鹿言うな!!二度とそんな縁起でもねえこと言うんじゃねえ!!」
その時に気づいた。ああ、写ってる。初めてジャンの瞳に写った瞬間だった。

5年前と同じように巨人が街に攻めてきた日。私は待ち望んだ日がきた、そう思っていた。私がジャンにとっての大きな穴になる方法。誰の変わりにもなれない大切な存在になる方法。それは、タダ一つだけだった。
「ねえ、ジャン」
「なんだ?」
いつだかと同じ問いかけをすると、彼は同じように返してきた。違うのは彼があくびをしていない事だけ。
「好きだよ。大好き。」
「なまえ?っ!」
ジャンの襟を引き寄せ唇にキスを落とす。彼は驚いたように声をあげた。ああ、写ってる。やっぱり写ってるよ。
「大好きだよジャン!」
「なまえ!?」
後ろ向きに屋根から落ちると巨人の口は目の前だった。


気がついたらジャンの部屋にいた。部屋からはでられない。まるで何か強い力に引き止められているかのように。扉の外でコニー達の声が聞こえた気がした。
「ジャンの奴ずっとうわごとのようになまえ、なまえって呼んでるぜ。」
「しょうがないですよ…。目の前で大切な人が食べられてしまったんですから…。」
私の口角は静かに上がった気がした。残ってる。私、ジャンの大きな穴になってる。その穴は誰にも埋められないよジャン。私じゃないと。
部屋に誰かが入ってきた。待ち望んでいた彼が。
大丈夫、私がいるよ。その大きな穴私だけに満たさせてね。


──────────補足
ジャン好きだけどジャンはミカサが好きで勝てないことを知る。
でもジャンが好きだから告白して
目の前で死んで自分を残そうとする話。
ヤンデレになってますかねーーー?!

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