エレン寄り


「なまえそれなんだ?」
「あ、これ?」
なまえの持つ短冊にジャンが感心を示していた。
「それは食べれるんですか?!」
「食べれないよ!!」
なまえはサシャから短冊を取られまいと両手で抱え込む。ああ、ああ、紙がくしゃくしゃだ。まだ何も書いてないのに。小さくため息を吐いて新しいのを取り出す。色とりどりなそれは見てるだけで心を浮つかせた。
「これね、短冊っていって私のお母さんから聞いたんだけど、」
昔愛し合った男女がいて、名を男が彦星。女が織り姫と言った。愛するが故に仕事が疎かになってしまった事を神は怒り、二人を引き裂いた。二人は嘆き悲しんだ。それを見た神は少し哀れに思い、年に一度だけ二人を会えるようにした…。
「それが今夜なの!!」
「なんだか悲しい話だなあ。」
「クリスタと離ればなれになるのはな…」
「うん、ちょっと意味が分からないかな。」
ユミルの変な回答に軽くツッコみつつ短冊を皆に渡す。特にサシャにはこれは食べ物じゃないことを念入りに伝えて渡した。
「その日にこれに願い事を書いて飾ると願いが叶うって言い伝えなのよ。」
「へえーっ!そりゃすげえな!!」
コニーはさっそく《背が高くなりますように!》と書いていた。背の高いコニー…。どうしても今の可愛いコニーがそのままでかくムキムキになったところしか想像できず、身震いしてしまったので考えることをヤメた。
サシャは《美味しい物が沢山食べれますように。》ユミルは《クリスタを守れるように。》ジャンは《ミカサとつき合えるように!》とか想像通りだった。というか想像通りすぎてどうすればいいか分からない。
もちろんクリスタは《皆が笑える世界になるように。》とか女神のようなことを書いていたので本当にキュン死にするかと思った。こうやってクリスタの事好きな人は増えるんだと思う。このちゃっかりさんめっ。
「なんだか騒がしいね。」
「おーい!なにやってんだ?」
遠くからエレンとアルミン、ミカサのトリオが歩いてきていた。
三人にも同じ説明をするとアルミンはすごく興味をそそられたようだ。
「まるで、エレンと私のよう…」
「ごめん、ちょっとよく分からない」
ミカサにエレンがツッコんだ。エレンがツッコむのは珍しいことだ。
「これに願い事書けばいいんだね?」
「え?あ、うん!あちょっ、」
すると、エレンが短冊をひったくりすらすらと書く。何をかいてるのかとのぞけば慌てて隠された。
「わっ、ばか!みんな!!」
「《なまえと付き合いたい。》「ミカサアアアア!!」だって書いてあるもの…」
「え、エレン…」
お互い顔が真っ赤だ。ポコポコ湯気が出てるよう。
「あ、あのさ、俺その、なまえの事がさ…す「エレン、星が出てるよ。」ミカサアアアア!!」
さすがミカサ。鉄壁の防御。まるで壁だ。ウォールマリア?ウォールシーナ?ウォールローゼ?いいえウォールミカサです。
でも、
「ホント、きれい。」
皆空を見上げ嬉しそうに微笑んだ。確かに絶望だらけの世界だけど残酷な世界だけれども、私たちは生きているんだ。今は囲まれた空しか見れないけれどいずれ必ず外に出て本物の空を見たい。
不意にエレンが私の手を握ってきた。
「生きよう。」
私たちは死なないよ。夢があるから。
《皆が笑顔でいられる世界になりますように。》



0708

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