(現代、大人パロ)



「エレンとなんかつき合わなければよかった。」

なんでこんなことになったかな。


ことの始まりは一時間前。エレンとは半年前に同居し始めていた。
お互いに違う大学に通っていることもあり最近は少しすれ違いの日々が続いている。
「ね、エレン今度の土曜暇?」
「あー、アルミンと出かける。」
むむ、
「じゃ、じゃあ日曜は?」
「サークル行くから無理。」
最近のエレンは冷たいのだ。なにをしても大学サークルアルミンアルミン。彼女はどうでもいいのだろうか。出かけるのはまだいい。酷いときには私は晩ご飯を一人で食べ寝る。目が覚めてもエレンはいなくて朝帰り。もう浮気を疑ってもしょうがないと思う。
「…じゃあさ、来週は?」
「あー、無理だ。ミカッサァァ?!」
最後の方はもう卓球のアレ。アレだよ。サァァ!ってかけ声みたいになってた。理由は簡単、私が平手打ちしたから。
「エレン、私達最後にデートしたのいつ?」
「は?そりゃ…」
「…それさえわかんないんだね。」
今まで我慢してたのが今日全て吹き出してしまったようだ。あーもう、自分が嫌だ。涙がポロポロとこぼれ落ちた。だめだ。泣いちゃダメ。でも、止まらない。
「エレン、私って…エレンにとってなに?」
「なまえ…」
エレンが驚いたようにこちらを見てる。
「大切な彼女だよ。」
なんて言ってくれたらどれだけ嬉しかっただろうか。でもエレンはなにも言ってくれなかった。ずっと俯いてて、ああ、私っていらなかったみたい。エレンにとって必要なかったみたい。
「…ぶってごめん。私出て行くから。」
「は、」
「もういいの。十分わかったから。」
「分かったってなにがだよ。」
「エレンの気持ち。」
とりあえず少しの着替えだけを鞄につめた。あとはまた取りに行こう。
「今までありがと。」
いつもの私ならすぐに許していただろう。でも今回だけは許せなかった。どうしても許せなかったのだ。
「おい、待てって!」
「離してよ…」
「嫌だ!行くな!」
無理に手を引っ張られてエレンと向き合う形になった。なんでこんなことになったの。エレン好きなのに。エレンは私が好きじゃないよ。
なんで私だけこんな気持ちでいなきゃいけないの。エレンにとって私って何。ただの一緒に暮らしてる女?朝帰りは誰といたから?
もうこんなに辛いのは嫌だよ。
「エレンとなんかつき合わなければよかった。」
「なまえ…、」
エレンがゆっくりと手を離した。私は足早に部屋を後にした。


△▼

「エレンとなんかつき合わなければよかった。」
頭を何かで殴られたようだった。なまえの言ってる意味が分からない。
たしかに最近、大学の先輩たちやアルミン達とばかり遊んでいた気がする。最後に遊んだのはいつだったかなんて思い出せないくらい昔のような気がした。
私って、エレンの何?
なまえは俺の大切な彼女だ。そう言いたいのに声が出なかった。喉がヒューヒューなって言いたい言葉が出ない。なまえはそれを肯定と受け取ったのか顔を歪めていた。あんな顔見たこと無かった。見たくなかった。自分の事ばかりでなまえのこと全然考えてなかったのは俺だ。絶対に傷つけた。
なまえが去っていったドアを見つめて呟く。
「俺たち、もうダメなのかな。」
胸にぽっかり穴が空いたみたいだ。



△▼


「帰れ。」
「そこをなんとか!」
幼なじみのジャンの家に駆け込んだ早々帰れとは、幼なじみの風上にもおけない奴だ。
「お前の気持ちはよくわかった。じゃあな。」
「嘘だよ!!私はジャンが幼なじみでよかった!見捨てないで!」
閉められたドアをどんどん叩いて叫ぶ。
「ジャンお願いです!開けて!ジャンまじリスペクト!!お願いです!!ハゲこら!!」
「誰がハゲだ!!!」
ドアを開けてきたのでスルスル中へ入る。後ろでジャンのため息が聞こえた気がした。
「ったく…。どうせエレンと喧嘩だろうが…」
「な、なんで分かるの!?」
「何年幼なじみやったと思ってる。顔見りゃ分かるよ。」
お見通しかあと笑うとジャンは顔を歪めた。
「そんな顔で笑うな。」
「ごめんね。でも私もう帰れないの。」
エレンにつき合わなければよかったって言っちゃったの。
そこまで言って涙が溢れた。あの時のエレンの顔が忘れられない。あんなエレン初めて見た。
「泣くな。アイツのことだすぐ忘れるさ。」
「も、多分ダメなの。絶対に傷つけた…」
涙が止まらない。なんであんなこと言ったのだろうか。自分でいっぱいいっぱいでエレンの気持ち考えてなかった。デートなんて我慢すればよかったんだ。いつもみたいに私が我慢すればよかった。
「お前は、エレンが好きなんだろ?」
「好き、大好きだよ。でも、でもっもう…!」
「だそうだぜエレン君。」
「…は?」
振り返るとエレンが息を切らして立っていた。な、なんでここに?
「ハァ、ジャンがと、とにかく来いって…ハァメール…」
相当とばしてきたようだ。キッと睨みつけるとジャンは笑った。
「さっさと帰れ。俺は忙しいんだ。」



帰り道微妙な距離感の中二人で歩く。会話は無かった。重たい空気だけが二人の間を通り抜けている。
「なあ。」
エレンが口を開いた。私は俯いてなに?と返した。これから何を言われるのだろう。どう考えても別れ話以外は思い浮かばない。
「今まで悪かった。寂しい思いさせてごめん。」
え、と立ち止まるとエレンも私の横に並んでたった。エレンがこちらを向く。エレンの顔は悲しそうに歪んでいた。まるで泣くのを堪えているように。
「エ、レン…」
「もう、つき合わなければよかったなんて言うな。お前は、もう俺なんか好きじゃないかもしれないけど…お前は…なまえは俺の大切な彼女だから。」
止まってた涙がまたあふれ出す。エレンがおどおどして自分の服の袖で私の目を乱暴にゴシゴシ拭いた。痛い。
「も、泣くなっ!そうだなまえが行きたがってた遊園地に行こう!なっ?今度の土曜にさ?」
「アリュ、ミンっは…?」
「断るよ。日曜も休む。久しぶりに一緒にいよう。」
なっ?といってエレンは笑った。眩しくて目を背けちゃいたい。エレンは私の事大切に思ってくれてたらしい。
「つき合わなければ、よかったなんて言って、ごめっね。」
「うん、俺もずっと一人にさせてごめん。」
「めんどくさい、女でっゴメン。」
「俺も、冷たくしてゴメン。」
好きだよ。なんてエレンが笑うから私はまた涙が止まらない。
「でも、もうジャンのとこには行くなよ。ていうか、男の家に行っちゃダメだからな。」
「気をつけるね。でもエレンも朝帰りはヤだ。不安になっちゃう。」
「飲んでたら寝ちゃうんだ。お互い約束しよう。」
二人で指切り。さっきまでの不安がなくなった気がした。これからもよろしくねって言えばエレンがいきなりキスなんかしてくる。
「外だよバカ。」
「いいんだよ。好きだから。」
私達の同居生活は始まったばかりだ。



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