「ねぇ大介さん、私メガネ似合う?」
でかい仕事を終えて暫しの休息
アジトで理沙と二人、戦利品の品定めをしていた
そんな折、最近視力が低下したと言い眼鏡をかけるようになった彼女は、俺と2人きりの時にしか見せないあどけない表情と仕草でその姿の評価を俺に求めてきた
「似合わないな、やめとけ」
「えぇっ、ルパンは似合うって言ってくれたよ」
彼女の口から相棒の名前が出た拍子に何故か醜い独占欲が渦巻いた俺は、ふんっと鼻を鳴らして手にしていた宝石をテーブルの上に転がすと、煙草に火を点けた
忘れかけていたこの幼稚な感情を、我慢して抑制して、そういえばもう長いことこのままだった
「後はいいから、自分の部屋戻れ」
「どうしたの?何でご機嫌斜め?」
「お前のせいだ」
ふて腐れた様を見られたくなくて帽子を更に目深に被り直す俺を見て、訳が分からないといった表情で瞬きをする彼女は、「変なの」と言いキッチンの方へ行ってしまった
それを気配で追いながら完全にこの部屋から消えたことを確認すると、俺は思いきり紫煙を吐き出して煙草を灰皿に雑に押し付けた
彼女がキッチンでさせる音と時計の音だけが妙に響く
ある雨の日の午後
俺の虫歯が疼く午後
人間はこの欲望に似た感情を"恋"と呼ぶのか
どうして胸は痛むのだろう