女や宝石より
類い稀なるワインだ

昔はよくそう言っていた



一ヶ月ぶりの日本
柄にもなく、気持ちが急いていた
歩くスピードが速くなる
煙草の煙が風に靡いて目に滲みた



「理沙、いるか?」



愛しい女の住む部屋へ脇目も振らず一直線だった
もうルパンのことは言えねぇと自己嫌悪に陥りながらも、そんなことすらどうでもいいと思っていた

会いたくて仕方なかった



「えっ、大介さん」

「セキュリティがザルだな、この部屋は」

「何言ってるの」



久しぶりの再会にも関わらず、いつもと変わらない調子の彼女に物凄く安心した
彼女自身も部屋も匂いも全部、相変わらずだ
俺は、彼女が風呂上がりの髪を乾かしていたことなどお構い無しにソファに身を投げ出した



「随分急いで来たみたいに見えるけど?」

「バレてんのか」

「どうしたの?何かあったとか?」

「いや」



最後の一本だったマルボロに火を点ける
深く深呼吸するように味わって、小首を傾げたまま俺を見つめている彼女と視線を合わせた



「わかった」

「何がだ?」

「何で急いでたか」

「言うなよ?」

「なんで?恥ずかしい?」

「情けねぇからだ」



彼女は小さく笑った
妙に大人びた仕草で半乾きの髪を耳にかけながら、傍に寄ってきて俺の帽子に手を掛ける
俺は制するようにその彼女の手を掴んで身体を起こした



「会いたかったよ」

「ああ、俺もだ」





寂しがりな猫背




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