池袋東口方面サンシャイン60階通り
肩をすべる春の風を感じながら、彼女の待つファーストフード店に足を運ぶ
待ち合わせの時間より少し早いはずなのに彼女はすでに店内の一番端の席に落ち着いていた
キツめの煙草をけだるそうに吹かす彼女にやぁ、と声を掛け、隣にコーヒーとナゲットだけを乗せたトレーを置き腰掛けた



♂♀



「で、話変わるけど…理沙?」

「…あ、うん何?」

「なんか落ち込んでるとこ悪いんだけど、仕事の話してもいい?」



しばらく他愛のない会話をしていたが、待ち合わせをした本来の目的へ移行しようとした時、考え事をしていたのか彼女は、俺の呼び掛けに一瞬間を開けて反応した



「別に落ち込んでない、ちょっと考え事しちゃっただけ」

「そう?ならいいんだけど」



彼女はいつもこうだった
俺が何か話していても時たま上の空になったり(まぁ波江もそうだけどアレの場合はただ興味がないだけ)思い詰めるような表情をする
きっと独りで落ち込んで逃げ出したいことでもあるのだろうと思いはするものの、恋人でも何でもないただの仕事の雇い主という俺はどうしてやれば良いのだ?
そんなことを考えるなんて俺は、どうにかしてあげたいと思っているんだなぁと、自嘲気味に笑ってしまった

俺が支えになれるのだろうか



♂♀



一通り仕事の内容を話し終えて、俺は無くなりかけのコーヒーに口を付けると、危険な仕事だから自分も同行する旨を付け加えた



「今回も私だけでいいよ、臨也は必要ない」

「いや、今回からは二人でって思ってね」

「なに、"今回から"って」



そう言って微かに微笑む彼女を俺はどうしてやれる?
いつも「一人で十分」と距離を置く彼女に少しずつでも歩み寄れば、あんな顔をしなくて済む日が来るのだろうか



「俺が一緒じゃ不満?」

「そんなわけないでしょ」




ねぇところで始まりのキスを仕掛けたのはどちらからだっけ?





心配事は
みんなどこかに置いてくればいい
何もないと感じたら
その手を伸ばして
俺が必ず掴んであげる


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