いつも 目で追っていた





「あれ 臨也 久しぶり」


一週間ほど、足を運ぶことのなかった池袋
今回は仕事というか、ただネットで知り合った仕事に使えそうな奴を直接遊んでやろうと、フラッと寄った程度だった
人でごった返す大通りで俺を見つけた理沙さんは、俺の気持ちを知ってか知らずか若干嬉しさを含んだような表情で小走りに駆けてきた



「一ヶ月ぶり?」

「一週間くらいだよ」

「え そんなんだっけ?」


なんかすごく長かった気がする 、と言いながら彼女は、いつも吸っている煙草を取り出し火を点けた

仕草の一つ一つ、表情も言葉も一つ一つがいちいち俺のツボだったりする
普段、何にも興味のなさそうな且つ冷めたような雰囲気を醸し出している理沙さんが、俺に心を許している様子を見て取れるからだ
学生の頃から、素の俺も今の仕事の上での俺も知っていて傍に寄って来てくれるのは理沙さんだけだった

一つ年上で優しくて、空気はちゃんと読めるし頭も切れる、まともな人間に見えてそうでもなかったり、見た目に反してヘビースモーカーなギャップだったり
"興味"の対象からいつからだったか、"憧れ"に変わっていた


「仕事中?今からご飯一緒にどう?」

「んー、そうだなぁ」

「無理にとは言わないけど」

「じゃあ…」



嬉しいくせにすぐに答を出さないのはいつもの癖か、決まっているのに勿体振る態度を取ってしまったことを少し後悔した



「もちろん私の奢りだし」


俺が少し考え込む振りをしたせいで、理沙さんに余計な気遣いをさせてしまった



「それともすでに予定ある?」



彼女は、煙を吐き出しながら煙草を携帯灰皿に押し付け、柔らかく微笑む


忙しいもんね、と俺の頭を撫でた



「忙しくなんかないよ、今日は暇つぶしだったし」

「そう?じゃあ何食べる?食べたいものある?」





マルボロを呑み込んだ心臓が燻る




静雄も呼ぶ?

絶対ヤダ



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