「理沙さん 新しいタオルどこ」

「新しいタオルって?下ろしてもないやつってこと?」

「そう」

「上から二番目の棚に入れたと思うよ、この前来た時確かそこに」


そう言いながらバスルームへ行くと、臨也は全く見当違いな所を探っていた
素敵で無敵な情報屋さんは自分の部屋のどこに何があるか把握できてないのか、と思いながらも、表向きの彼しか知らない他の人たちに比べると、抜けた部分を見せてもらえている私は信頼されているんだなと実感する


「臨也、そこじゃなくてこっち」


棚から新品のタオルを取り出し手渡すと、臨也の手に触れた
途端、彼は耳まで真っ赤になってしまった

少し生身が触れたくらいでこんなに初々しい反応をする男だっただろうかと思考を巡らせながら彼を見つめていると、ふと目が合った


" 理沙のこと好きなんだとよ "


昨日、静雄に言われた言葉を思い出す



「ねぇ 臨也」

「なに」

「私、臨也のこと好きだと思う」


意地悪とか、からかってやろうとかそういうつもりではなかった
自分が、なぜこんなにも彼を気にかけ、毎日でなくとも傍にいてやるのか
考えたらそれは簡単なことだった

新宿で名を馳せる情報屋、関わってはいけない危険人物とまで言われる彼が、弱くて脆くて且つ人間らしい普通の部分を、素直に、あからさまに自分に見せてくれる様はとても嬉しかった、好きだった



「それ本当?」

「本当」



私から視線を外さず、驚いたようなそれでいて少し確信めいたような清々しい表情にも見える臨也は、壊れものを扱うような手つきで私の頬を怖ず怖ずと撫でた



「好きだと"思う"が何だか気に入らないけど」

「ふふ、ごめん、好きだよ」

「俺も、理沙さんのこと大好き」




それはまるでコーヒーのような




苦かった時もあるよ




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