「夕飯何にしようか」
「俺ハンバーグがいいな」
「また?」
俺の部屋で同棲するようになって半年
毎日ではないが、たまに気が向いた時食事を作ってくれる彼女は、今日はその"気が向いた時"らしく料理本を見ながら夕飯のメニューについて考えを巡らせていた
こんな何気ない幸せが俺にもあることがとても嬉しかった
「この間食べたのは一週間位前だよ」
「そうだっけ」
言いながらキッチンへ向かい冷蔵庫の中身を確認する彼女を、俺はリビングでコーヒーを飲みながら眺める
この安心感、幸福感は一体何なのだろう
そこに彼女がいる、こんな単純なことがなぜこれほどまでに癒しなのだろうか
「理沙」
「んー」
俺の呼び掛けに生返事をし、「あー挽き肉足んないかも」なんて漏らしながら静かに料理を始める彼女の背中に、空になったカップを持って近付く
それに水を張ってからシンクに置くと徐に抱き着いてみた
「なに?」なんて冷たいようないつものような反応にまた嬉しさを感じる
俺にとって彼女は、この世で唯一の存在であり救いだった
「ハンバーグ作ってくれるの?」
「食べたいんでしょ?」
質問に質問で返しながら少しこちらに振り向いた彼女に唇を重ねた
「大人しく待ってて」と言いながらも押し返さないのは、彼女も俺をちゃんと愛してくれているんだろうと思えた
「理沙、愛してるよ」
隣に居る君が当たり前になっていたある日の事
別れの日がきませんように