後書き


かくとだに、読んでいただきありがとうございました。稲荷崎の連載(和歌シリーズでは)四つ目でした。

かくとだにえやは伊吹のさしも草 さしも知らじな燃ゆる思ひを。こんなにも想っているのに告げることができないので、伊吹山のさしも草ではないけれど、燃えるように熱い想いを抱いていることを、あなたは知らないでしょうね。藤原実方の歌です。

実はこの設定、最初は銀島くんじゃなくて黒尾くんで書いていました。散ればこそではない、まだ八月現在どこにも出してはいないお話があるんですけど、そっちを銀島くんで考えていて。でも三話目くらいまでどっちも書いているうちに、これ、二人を逆にしたほうがあっているんじゃないかな?となり急遽変更し書き直しました。当初黒尾くんで考えていた話とは全然違う感じに落ち着き、設定だけを残す形となりましたが、結果的にこのお話を銀島くんにしてとっても良かったと思っています。

ヒロインはお話の流れを考えてからどういう感じにするか決めたんですけど、銀島くんってどんな子好きになるかな……とか、好きな人とどんな感じの会話をしていて欲しいかなって考えていったらこんな感じに仕上がりました。なので12話とかの会話が実は一番最初に頭の中で作ったシーンです。

お気に入りの箇所を一つ挙げると、これ気がついてくださった方がもしもいたら拍手!!という感じなのですが、治連載しのぶれどの24話目後半が銀島くん視点になってるんです。そこで「相性とか運とかタイミングとか、いろんなもんがごちゃ混ぜになって、選ぶというよりも当てはまった。恋愛なんてそんなもんやろ。」と言ってます。なので、この連載の13話、銀島くんがヒロインを好きになった時に「相性とか運とかタイミングとか、いろんなもんがごちゃ混ぜになって自分の中に当てはまる。恋愛ってそういうもんって思って来たけど、今まさにそれが起こった。」と言わせています。しのぶれどを書いていた段階からここは銀島くんを書いた時には使おうと思っていたので、使えて満足です。もはやお気に入りのシーンではないなこれ。こだわった場所的な?

銀島くんって真っ直ぐで熱くて責任感があって、恋愛に対しては初心なイメージが勝手にあるのですが、原作読んだりしてると冷静な場面もたくさんあるなぁという印象もあります。もしも学生の時だったら、こんなにもガンガンアプローチとか出来るかなって思うんですけど、なんとなく周りの頑張りとか変化を見て銀島くんは熱を受けてさらに燃やしていきそうっていう勝手な思い込みがあったので、角名、治、侑、あと北さんのところとか、自分の周りに気づかされて、自分も変化して、もっと気持ちを上げていくって感じにしました。

波とか海とかの描写が多いです。銀島くんを何かに例える時にどうしても太陽っぽくしたくて、最初はヒロインが雲に漂っている感じにしようともしていたんですけど、色々考えて最終的に海になりました。というのも、(これ今後他のお話を書いた時にこの和歌使う可能性あるなと思ってここで出すか迷ったんですけど、出します)『由良の門を渡る舟人かぢをたえ ゆくへも知らぬ恋の道かな』(由良川の河口を渡る船頭が、かじをなくして行く先も決まらぬままに漂っているように、私のこの恋も行く末に迷っている)をタイトルにしようと最初してたんです。

かくとだににするか、由良の門をにするかで迷って迷ってかくとだににしました。しのぶれどは治もヒロインもお互いに忍べてない恋なんですけど、角名のきみがためは(現在まだ完結してないのでアレですが)角名側の心境で考えているものです。つくばねのも侑側を意識しました。北さんのタイトルもお互いにそう取れるようにですが、北さん含めです。稲荷崎のタイトルは今の所キャラクター側を特に意識しているものが多いのでかくとだにになりました。由良の門をの歌大好きなので、今後何かの連載に使う可能性ないとは言い切れないですが、もしも連載をすることになったらその時もう海の表現使えないか違う感じにしないとなって今ちょっと焦ってます。

銀島くんの連載を書いている他サイトさんを私もあまり見たことがないのですが、感想とかいただいた時に銀島くんの夢を読みたかったので嬉しいと言ってくださる方が何人かいました。数が少ないからこそせっかく銀島くんで訪れてくださったのに、そこでガッカリさせてしまったら申し訳ないなと思って、ドキドキしつつ気合を入れて書いておりました。少しでも気に入っていただけていると嬉しいです。

私自身銀島くん大好きなのですが、彼もあまりはっきりとした登場シーンがそこまで多くはないキャラであるために、かなりこれで大丈夫かな!?と心配になったり不安になったりが多かったです。でもいただいたコメントや、この連載を更新した日は拍手の数がいつもの倍くらいあったりとかを見て、励まされながら毎話更新しておりました。皆さんのその反応に支えられる形でこうして載せ切ることができました。本当にありがとうございました!

銀島連載かくとだに、読んでくださり本当に本当にありがとうございました。もしよろしければ、一言でも読んだよ!と拍手やメールで報告していただけるととても嬉しいです。これからも当サイトをよろしくお願いいたします。

22,08,05 栄田




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