鴻雁北


「赤葦くん、おはよ」

「………あれ、寝てた」


うん、ぐっすりだったよ。と笑うコウは珍しいねと言いながらノートを差し出してきた。連日の練習量は一年生の頃から変わらない。その頃よりは確実に体力もついたし、厳しいながらも毎日しっかり体を休めながら自分の体調も考えて生活しているはずだ。それなのに、なぜだか今学期に入ってから眠くてたまらない日々が続いている。


「最近ちょうど良い気温になってきたから、昼間は眠くなるよねぇ。あ、ここはテスト出てるって言ってたから、絶対に書き写しておいてね」

「ありがとう、助かるよ」


まだボーッとする頭を無理やり回転させて、軽い欠伸をしながら部活に向かうために席を立った。スゥッと大きく息を吸って数秒止めた。満たされた肺が酸素を取り込んで頭が段々と冴えてくる。


「ノート、明日返すよ」

「うん。今日も部活頑張ってね」

「ありがとう。頑張るよ」


先日コーチから言い渡された半月後に迫ったGWの練習日程を頭の中で確認する。ぼーっとしていたら月日なんて直ぐに経過してしまう。長いようでこの二年間はあっという間だった。今年は、今までよりももっともっと早く過ぎ去っていくんだろう。だらけていては駄目だ。もっとしっかりしないと。

鴻雁北

(こうがんきたへかえる)
雁が北へ渡って行く
四月十日〜四月十四日

  

 
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