「倫くんちゅーしてって言って」

「……え?」


聞き間違いだろうか。でも凄いこっち見てる。別にこれといって何もないいつも通りの夜。二人でテレビを見ながらボーッと過ごしてたら突然隣にいた彼から発せられたその言葉。


「倫くんちゅーしてって言って」


いつも何も言わずに急にしてくるのに、何を言っているんだろう。そう思いながらも、なんだかいつも以上に真剣な目をしているので「……倫くんちゅーして?」と言われた通りに控えめに、あくまでも言わされてますという体で口に出してみた。


「仕方ないなぁ」

「ええ、そっちが催促したんじゃ……うわっ」


フッと笑った倫くんの瞳が楽しそうに弧を描く。そして大きな体が私を押さえつけるようにして覆い被さってきた。いやいや、待って、おかしい。でもそんな反論は彼には届かない。


「なまえちゃんのお望み通り全身にしてあげるよ」

「や、別にそこまでは望んでな、」


話の途中で虚しくも遮られた。重なった唇から軽く息が漏れる。もうこうなってしまったら止められはしないのだと諦めるように笑って、好き勝手に続けようとする彼を受け入れた。



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