桃色のファンタジー

 
もうすぐ夏休み!休みは嬉しいけど孤爪くんと会える日が少なくなってしまうのはとても悲しい。どうにかして会いに行きたいし、電話もLINEもしたいけど、孤爪くんはどう思ってるんだろう。


「夏休み楽しく過ごしたいなら来週からのテスト頑張れよ〜」


帰りのHRの担任の一言で現実に戻される。テスト!最悪。べつに赤点取るかも〜ってほどに勉強は馬鹿ではないけど、学生というものはテストという単語そのものが嫌いだ。好きな人もいるかもしれないけど、私は嫌い!


「孤爪くんはテスト好き?」

「……その質問必要?」


孤爪くんは私の質問には答えずにいつも通りの無表情のまま帰りの支度を続行する。答えてくれてもいいのに!とその姿を見ていると、後ろの席の子が「お前らマジででこぼこカップルでウケんな」と言ってくるので、なんだか嬉しくなる。


「私たちカップルに見える?」

「まぁカップルっつーか、館が孤爪のこと好きすぎて逆に遊ばれてるように見える」

「何それ…!でも本当なのが辛い」


悔しくて手を握り締めていると、「早く支度しなよ」と孤爪くんが少しイライラした様子で話しかけてくる。元はといえば孤爪くんのせいだからね!


「………今日から部活ないから」


スッと立ち上がった孤爪くんに視線を向ける。だるそうに立ち上がった孤爪くんは扉の方へと歩きながらボソッと小さな声で行った。


「館さんの好きそうな映画のDVD、借りてあるんだけど」

「…………え、それって」

「だから早く支度して」


机の上に散らばっていた文房具たちを一掴みにして筆箱の中に放り込んで、ガタガタと忙しない音を立てながら席を立ち、スタスタと行ってしまう孤爪くんを慌てて追いかける。

孤爪くんから、初めて放課後デートのお誘い!


「…でも孤爪もちゃんと館のこと好きだよな」

「ひそかに言ったら調子乗るからやめな〜」


教室でそんな会話が繰り広げられていたことは、私も孤爪くんも知らない。


← / 

- ナノ -