「信介、キスしたい」


ふとそう思って素直に口に出してみた。信介は読んでいた本から目を離して、表情を変えずにスッとこちらに視線を向ける。


「ん」


読みかけの本にしおりを挟んで傍に置いて、そっと両手を広げた彼を目掛け勢い良く飛び込む。そんな私をしっかりと受け止めて、「なんや今日はめっちゃ甘えたやな」なんて言いながら優しい手つきで頭を撫でてくれた。


「落ち着く。もうこれで十分な気がしてきた」

「まだ何もしとらんやん」

「ん〜そうなんだけどねぇ」


暖かい腕に包まれて、何だか眠くもなってきた。ふわっと大きなあくびを一つ溢せば、「子供か」と笑った信介がコツっと額をくっつけてくる。


「すまんなすえ、俺は全然満足しとらん」


自分からしたい言うたんやから発言の責任ちゃんと持て。そう言った信介がふんわりと唇を落とした。優しい熱を全身に感じて、今日もまた、私はこの上ない幸せに包まれるのだった。

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