unhappy birthday
『ディオの誕生日?』
私の部屋に入るなり、父の第一声はソレだった。
「そう、明日はディオくんの誕生日なんだ。ジョジョ、これがどう言う意味だか分かるかい?」
そう優しげに言って部屋を去って行った父だが、その発言は私にとって嫌な発言には違いなかった。
つまり父は私に「彼のためにプレゼントを買ってきなさい」と言ったのだ。
まったくそんなまどろっこしい事を言わないで、直接言えばいいのにと思っても無理な話なのだろう。
父は私がディオを嫌っているのに気付いていて、無理には言おうとしない。
私が父の言う事を断れないと彼は知っていて、それが彼なりの優しさなのだろう・・・。
でも、優しさをくれると言うなら誕生日の事は言わないでほしかった。
私の性格上、チキンな私はそんな話を聞いてしまった以上。行動を示さないと気が済まないタイプなのだ。
『はぁーーーー。』
私は大きくため息を吐きその場から立ち上がった。
そして次の日。
父と使用人たちが誕生日パーティーを開いていたが終始、ディオは不機嫌マックスだった。
もう人を自分に近づけたくないオーラを全開でお祝いに言いに来る彼の友達(きっと奴は思ってないだろうが)を睨み気化していた。
さすがに私の父にはそう言う態度は見せなかったが・・・明らかな態度が私を苛立たせた。
そして私は手に持っていた、不本意だが奴に渡そうと思っていたプレゼントの包装ごと握りつぶそうとした手を止めた。
私は彼が機嫌が悪いのはきっと傲慢な性格上、なにかしら気に入らないと思っていたが・・・。
もしかしたら、彼は自分の誕生日が嫌いなのかと言う考えにたどり着いた。
私のもう掠れかかっている前世の記憶&数年前に自分が挑発した言葉を思い出せば、彼は父親を嫌っている事を思い出した。
前世で父親を嫌う人なんて何人も見てきたし、私もその中の一人に入っていた人間だ。
そうは言っても思春期からくる異性として父を見た時の嫌悪であって、彼のように真っ向から全否定・・・否定を超えた拒絶と言うべきか。
それほどまでに父を嫌っている彼にとって、誕生日は嫌でもその父から生まれたと証明づけているのだろうと考えたからであった。
その考えの裏付けのように、奴はパーティーが終わった後の事で自分の部屋(つまり私の隣の部屋)に帰ってもその怒りは当分収まる事はないのだろう。
彼は一応、気づかれないようにモノをベットにあたっているのだろうが残念だがその振動は私の部屋にまで伝わってくるのだ。
一際、騒いだ後に沈黙が続いた。
そしてここ数年、アイツと過ごしていくうちに不本意であるが奴の行動パターンは分かっている。
どうせ今頃、その無駄に高いプライドのせいで自分の体にさえも嫌悪感でいっぱいになっているに違いない。
なんとアホな…大事なのは自分の魂だと言うのに(まぁ、奴の魂は真っ黒だが)
一度死んだ私が言うんだこれほどに無い説得力だと思うんだがな・・・そう思いながらボーっとしていると目に入ったアレ。
『・・・・・・・・・・・・・・・。』
真っ赤なリボンが綺麗で包装された奴に渡すはずの物だ。
私は人差し指でそれを自分から遠くに押しやった。
それから数秒と発たぬうちに、ドスンッ!!という衝撃がまたきた。
最初はまたナニカ投げたんだろうと思ったが、衝撃からして自分がベットに転がったのだろうと思った。
そしてまた目にプレゼントが映った。
『はぁーーーーーーーーーー。』
大きなため息を吐き、私はそれを手に取って部屋を出た。
もちろん、まっすぐに奴の部屋に向かうはずもなく私は使用人の部屋へと向かい包帯を取りに行った。
「・・・・サンさま、ジョナサンさま」
自分の名前を呼ぶその声に目が覚めた。
パチリと目を開ければ、そこにはブラフォードの顔が視界にいっぱいに広がっている。
『・・・・・・・・・・・・・・・・きもい』
その一言に尽きた。
何時もなら大声で叫ぶが、その余裕は寝ぼけからか、それとも昔の夢を見たからなのか・・・その気にはなれなかった。
眠い目をこすりながら、布団から起き上がった。
『ブラフォード、今日って何日だっけ?』
私の発言に落ち込んでいるブラフォードに聞けば、彼はすぐに答えた・・・・涙声で。
「はい―――――――日です。」
今日の日にちを聞いて私は納得いった。
なぜあんな夢をみたのか・・・もうこの世界で奴と私の二人だけが知っている日だ。
といってももう死んだ人間の誕生日だ…人間のアイツは50年前のあの日にとうに死んだのだから。
『なぁ、ブラフォード。お前は自分の産まれた日を嫌う人間に気持ちが分かるか?』
そういきなりの質問に彼は意味が分からないと言う顔をして答えた。
「さぁ、分かりません・・・・。」
その発言に私は笑った。
『私もだ・・・。』
<後書き>
空汰さんとの相互リンク記念です。
誕生日もかねてくださった素晴らしいお話のジョナ視点で書いてしまいました。
空汰さんのみ持ち帰りができます。