愛しき巨人
素敵な絵をくださった。まっつーさんに捧げます。
ぶどうヶ丘高校での仕事を終えて、元同級生と話し込んでいるといつの間にか夜になっていたらしく急いで帰る事にした。
同級生は送ると言ってくれたが、途中で今日の夕飯の材料を買わなくてはいけないので断った。
今日のご飯の材料を考えながら校門を抜けようとした時、校門の前に大きい影があるのを見てそれが誰だか分かった私はそれが私に背を向けているのを知っていて思いっきり飛びついた。
『承太郎ッ!!』
ドンと思いっきり飛びつき、その背中にしがみ付いた。
この巨人はそんな事ではよろけないと知っているから出来る技である。
「・・・・・・・びっくりするじゃねぇか」
でもそんな巨人でも驚くものは驚くらしい。
『フフッ…ごめんなさい。』
そう思ったら面白くなって思わず笑ってしまい、彼の横顔を見た。
私の心ない誤りにちょっと不機嫌気味になっているが、そこは長い付き合いで十分にカバーできる範囲だ。
私はギュッと首に抱きつけば、だいたいの機嫌は直るというものだ。
これって夫を尻に敷いているっていうのかしら?
と、なんともどうでもいいことを考えていたら承太郎は歩き出した。
私が歩く気がないという心中を察してくれたらしい。
承太郎が歩くたびにその振動が私にも伝わってきてそれがとても心地いい。
いくら年を取ろうがこういう事に人間は弱いらしい。
承太郎の背中に体を預けながら思った。
もうアンジェとは呼べない、大人になった承太郎。
あの可愛いあだ名はもう呼べないかと思うと、心底残念である。
呼べばこの巨人は絶対に不機嫌MAXになるのだ。
この機嫌を直すには少々、骨が折れるからめったに言わない・・・そう、めったに。
私はチラッと盗み見するように承太郎の顔を見た。
今日も相変わらずの無表情、そのくせ娘にはとっても慕われているのだ。
我が娘ながらその慣性には驚くばかりだ、この無表情を見てキャッキャと昔は笑っていたのだ。
良く笑うと言うところは私に似たのだ、それは良かった。とてもよかった。
『徐倫はどうしてる?』
我が愛しい愛娘、プランセス(姫)の事を聞けば承太郎は無表情のまま答えた。
「徐倫は仗助たちと遊び疲れて寝ちまった。」
『まぁ、フフッ!!じゃぁ、今日はみんなの分もご飯を作らなくちゃね・・・・・スパゲッティってのはどう?もちろんナポリタン!!』
承太郎と徐倫がナポリタンが好きだ、もちろん私もナポリタンが好きだ。
それに、口いっぱいにケチャップつけたプランセスが可愛すぎるのよッ!!
「あぁ、いいな。」
私が承太郎の横顔を除きながら聞けば、僅かに弛む口元を見て私も嬉しくなる。
『よしっ!そうと決まれば、スーパーへレッツゴー!!今日は育ちざかりが多いんだから、荷物はいっぱいよ!!』
大きい荷物を私が止めても全部持つと言い出すであろう、愛すべき巨人の姿を思うと顔がにやけてきた。
それが横目でも承太郎に見えたのだろう、フッと私のほうへと顔を向けた。
昔から大好きな緑色の瞳が私を見つめる。
「沙羅・・・さっきからどうした?」
そう言って私の様子を聞いてくれる、嬉しさに思わず彼のからに額をぐりぐりと押し付けながら言った。
『承太郎…今、幸せ?』
「・・・・・・・どうした?」
なぜか唐突にそう聞きたくなった。
なぜなら・・・。
『私は今、とっても幸せよ。あなたと徐倫がいるもの』
この幸せが少しでもこの巨人に伝わればいいなと思ったからだ。
私はギュッと腕に力を込めて、承太郎の頬に自分の頬を寄せた。
『好きよ…承太郎』
そう言えば、私の愛する巨人はプイッと顔を背けるのを私は知っている。
「 」
言葉は返してくれるけど、小さな声のまだまだ私の可愛いアンジェと呼べてしまうのであった。
<後書き>
承太郎はあだなで呼べなくなったので、娘をプランセス(フランス語)で呼んでいます。
いつかこのあだ名を嫌がるんだろうな・・・。
きっとこの後、スーパー言って荷物を全て持とうとする承太郎だけど
主の「手を繋ぎたいな」の一言でいとも簡単に荷物を明け渡すんだろうなと思いながらニマニマ書いている私であった・・・・。(キモいな)
何年たっても年上の主の方が余裕があるんですな。
ちょっとネタバレでした。
四部は主は高校で教師をしてます。
教師っていうか・・・特別講師?
ぶどうヶ丘高校の先生の一人が主のもと同級生って設定なんですな。
その同級生の頼みで、特別講師になるために杜王町に来たと言う設定です。
最後になりましたが、まっつーさん素敵な絵を本当にありがとうございました。
これで私の感謝の思いが少しでも伝われば幸いです。