透明鎖






「ジョナサン様、紅茶をお持ちいたしました。」

「ジョナサン様、お菓子をお持ちいたしました。」

「ジョナサン様、庭園から綺麗な花をお持ちいたしました。」

「ジョナサン様、お疲れではないですか?」

「ジョナサン様、お腹はすいてはいないですか?」

「ジョナサン様、眠くはないですか?」

「ジョナサン様、体をマッサージしましょうか?」

「ジョナサン様・・・・―――――――――――。」

「ジョナサン様・・・・―――――――――――。」

「ジョナサン様・・・・―――――――――――。」





『うざい。』

一言、私は言った。

どうもアイツの手下は私にばかり気を回しすぎと言うか・・・しつこすぎやしないだろう?

テレンスを筆頭にヴァニラアイス、マライア、ンドゥール、エンヤ婆、などなどが私の回りによってたかっては何かと私の世話をしようとする。

特に厄介なのは・・・。

「ジョナサン様、お洋服をお持ちいたしました。」

『・・・・・・・・・・・・。』

もう絶句するしかない、エリナでさえあんなフリフリでキラキラしているドレスを着ていなかったのにそれを笑顔で持ってくる男。

一々、違うのを持ってくるから一度だけ『それは買っているの?』と聞いたら笑顔で「私の手作りです。」と言われてマジでドン引きしたのはつい昨日の事だ。

そしてもう一人・・・。

ガオンッ!!

『・・・・・・・・・・・。』

「ジョナサン様、ご所望通りの物を持ってきました。」

彼、ヴァニラアイスは私が何かものを頼めば壁に穴を開けては去り。

そして壁に穴を開けて現れる。

おかげで私の部屋は毎日風通しのいい事、いい事。

どうやら変人の下にはそれと同等な変人しか集まらないらしい。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・。

ハッ!て事は私も変人扱いされているのだろうか?

ないないないないないないないないないないないないないないない。

ありえない!!絶対私はそんなのとは違う!!

次元が違うよ絶対ッ!一緒にしないで私とアイツを。

そう思っていると顔の真横からニュッと手が生えたのを見た私はスッと椅子から立ち上がった。

バッと後ろを見て心の底から後悔する。

まだ夜にならないと言うのに、私の目の前に現れたこの男に私の機嫌は一気に急降下する。

「おはよう、ジョナ」

ニヤリと笑う目の前の男に私は吐き気しか持ち合わせないので、挨拶などするはずもない。

『気安く私の名前を呼ぶな、化け物。』

私がキッと睨み付けても奴にとってはそれが嬉しそうなのか更に笑みを深くした。

本当にドMだな。テメェはッ!!

そう頭で暴言を吐いてやれば、奴は私の言葉など無視して話始めた。

「ジョナ、またお前は外にも出ずに屋敷にいたのか?」

そう言って奴は笑う。

私が大っ嫌いな笑みを浮かべて笑った。

「それとも、そんなに俺の傍にいたいのか・・・・。」

『ハッ!よく言う・・・・お前が私を閉じ込めているんだろう。この屋敷に』

そう言えば奴は意外そうな顔をして言った。

「何を言う、この屋敷には鍵もお前を止める者など誰一人としていない。それどころか、お前が出て行こうとすればこの屋敷にいる者はお前と共に行くというのに・・・。」

そうディオが言えば、後ろにいた二人の男は私に跪いた。

「すべてはジョナサン様のお心のままに。」

「さぁ、なんなりとお申し付けください。」

ギリッ!!

歯がきしりなるのさえも構わず私は睨み付けるのを止めはしない。

そうだ。この男は見える物では私を縛らない。

実際にこの屋敷には鍵はないし、門番をするペット・ショップも私に懐いている。

この屋敷から出るなんて10分で可能な事だ。

だけど私はこの屋敷から出ることはない。

出られはしない。

私は見えない鎖でこの家に閉じ込められている。

「フフ、お前の孫は今日も元気だろうな…ジョナサン。」

『・・・・・・・・・・・そうねあなたのおかげね。』

目を閉じれば、未だ会ったことのない孫の顔を思い出す。

目の前の男が気まぐれで私に渡した一枚の写真の顔がまぶたの裏に張り付いて離れることはない。

・・・・承太郎。

お前は知らなくていい、こんな薄汚い過去の遺物などにお前が縛られることはない。

お前は幸せになれ。

結婚して、子供を産んで、そして爺になって死んで行け。

それが幸せだ。それが幸福だ。

だから承太郎、過去の遺物などに囚われずに自由に生きろ。

「・・・・・・・・・・・。」

ギュッと手を握りしめていると、ディオは何を思ったのか私の手を取った。

そして私の握る手を無理やりこじ開けさせる。

どうやら強く握っていらしい、爪が食い込んでいて血が出ていた。

その血を見たディオはニヤリと笑って、舌を出して私の手を舐めた。

『・・・・・・・・・・・。』

無言で腕から逃れようとするが、吸血鬼の彼の握力に勝てるはずもない。

諦めていた私に、ディオは血を綺麗に舐めとったというのに舌の動きは止まる事はなく手のひらから指へと進んで行って中指を口に含んだ。

器用に、吸血鬼特融の鋭い犬歯を避けて私の指を甘噛みする。

その感触を味わうように、うっとりとしているディオを見て私は言った。

『私なんて、とっとと死ねばいいのに。』

そう言えば、ディオは私の手を開放した。

そして耳元に口を寄せて言った。

「だから俺はお前をここに閉じ込めるのだ・・・・ジョナ」

ディオはそう言って私から顔を話して、私の嫌いな笑みを浮かべた。










「俺はお前が心配で心配で仕方がないのだ。分かってくれよ・・・ジョナ」

分かるかアホがッ!!



<後書き>
過保護なDIO様との事。
きっとDIO様は過保護を取りこして監禁になりそうだなと思ったのでこうなりました。
書いているうちになぜかDIOの手下全員がジョナ崇拝になった。
なぜだ?





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