Say,I Love you | ナノ
【Say,I Love you】


大切にしたい、と思っていた。
距離がありすぎて、怖くて。
年の差も。
性の差も。
両方とも、途方もなく遠くて。
だから、いつも誤魔化していた。
好意は、恋ではなく。
優しさは、特別ではなく。

「教授、プリントここに置きますから」
「あぁ、ありがとう」

微笑んでくれるその瞬間だけが、欲しいから。
それ以上は、望んではいけないから。

「…っ」

ぼんやりしていたら、プリントの端が、指を弾いた。
ぴり、と熱が走る。

(あぁ、やっちゃった)

「見せてごらん」

言われて、断る間もなく、手を引かれる。
そして、傷口に、。

「…き、教授っ!」
「……舐めておけば、治るでしょう」

(だからって!)

ふ、と微笑む口元が、楽しげで。
眼鏡の硝子の奥で、愉快そうに、瞳が、。

(…愉快そう?)

「いつ、気付いてくれるかと思っていましたよ」
「教授…?」

ばさ、とプリントの束が雪崩を起こす。
拾い上げようとした、体が。

(な、なにっ?!)

温もりに包まれて。
その温もりから逃げようとしても、びくともしなくて。
優しい風貌に似合わない。
ちっとも、そぐわない。

「は、なしてください」
「何故。折角君が来てくれたのに」
「やめてください!」

大切にしたい、と思っていた。
距離がありすぎて、怖くて。
年の差も。
性の差も。
両方とも、途方もなく遠くて。
遠いから、届くとは思ってなかった。
願ってさえいなかった。
なのに、。

「俺は、男で…」
「知ってますよ」
「教授よりずっと年下で…」
「助手ですから、当たり前でしょう」
「釣り合わない、です」
「それを決めるのは、君じゃないですよ」

顔を上げると、さっき見せた、愉快そうな表情は消えていて。
とても、真摯な瞳で。
口元は、弧を描いていて。

「他には?」
「…え」
「他に、君が気にしていることは?」

考えているうちに、徐々に顔が近づいていて。
気付いた時には、唇に温もりが。

「もう離しませんよ」

耳元で囁かれた時にはもう、逃げる気さえ失せていて。
心の奥が、痛くて。
熱くて。

(いいのだろうか)

伝えたい気持ちが溢れそうで。
だから、そっと、首の後ろに腕を回して。
そして、


「貴方が、好きです」


答えは、数えきれない程の抱擁と、口付け。


【Fin.】
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後書代わりの戯言

東雲さんのイラストから、イメージして書いてみましたよ
今度も気に入って頂けると、嬉しいなぁ…♪


宜しければ感想等頂ければ幸いです!

web clap

2012/10/22 Wrote
2012/10/22 UP


コイ

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