ミステイク | ナノ
【ミステイク】


自分が愚かだと思うのは
一度や二度ではない
けれどこれは、間違えた、どころではない。

―※―※―※―※―※―※―※―※―※―

彼の、仕事に対する真摯な姿が好きだった。
それから、誰に対しても丁寧な態度を崩さない姿勢も。
私の、取るに足らない内容の会話にも、微笑んでくれる姿も。
好きだと、思っていた。

「好きです」

珍しく残業しなかった週末のこと。
仕事終わりに、たまたま彼が一人でいるのを見つけて。
それは、人にいつも囲まれている姿を見ていたから珍しいと思って。
そうして、勇気を振り絞って告げた言葉。
そこに、嘘はない。
少なくとも、その時点では。

「へぇ…何処が、ですか」

気持ちが揺らいだのは、彼のこの一言から。
優しく。
楽しそうに。
愉快そうに微笑む姿に。

(…愉快そう、に…?)

じり…と右足が後ろに行ってしまう。
ほんの少しだけ、距離を置きたいと思う、本能。
きっとそれは、間違いじゃ、ない。

「僕の何処が、好きなんですか?」
「…え…」
「告白してくるくらいなら…言えますよね」

にっこりと、満足そうに。
微笑みながら。
その瞳は。

(…知らない、こんな…)

「大丈夫ですよ。僕も、貴方が好きですから」

にっこりと、微笑む姿に、きっと嘘はないのだろうけれど。

(…間違えた)

じりじり、と後ずさる姿を見咎めて、彼は素早く、私の退路を断った。

「あ…あの…」
「ん?」

いつから好きなのかとか。
どうして好きなのかとか。
たぶん、聞きたいことは山のようにあったのだけれど。

「間違えた…っていうのは、ナシですよね…」
「もちろん」

そう言って、彼は、この日一番の微笑みを、浮かべた。


【Fin.】


後書代わりの戯言

LuvALシリーズです。
もう何作目だろう…?
別に、これはその、コメディにしたかったわけじゃなかったのですが(苦笑)

モデルにした方…ごめんなさい…汗


宜しければ感想等頂ければ幸いです!

web clap


2012/10/13 Wrote
2012/10/17 UP



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