ニチジョウヘンカ | ナノ
【ニチジョウヘンカ】


心から願うことは
どうしていつも、叶わないのだろう

―※―※―※―※―※―※―※―※―※―

毎朝毎朝。
同じことの繰り返し。
同じ時間に起きて。
同じ時間の電車に乗って。
同じ時間に会社に着いて。

「頭痛いなぁ」

たまに、ちょっとした騒ぎも起こるけれど。
それも些細な話で。
例えば、誰と誰が付き合ってるとか。
終業後の事務所での出来事とか。
会社の近くのバーの店員さんの話とか。

(私には、関係ないし)

私にできるのは。
いつもと同じように、潤滑に業務を進めること、だけ。
自分自身に何かあるというわけではなくて。
毎日同じことの繰り返し、で。

(…あ…)

この間の週末、らしくないことは、した。
あまり記憶には残っていないのだけれど。
男の子の、軽い声。
週末の夜の街。
掴まれた腕の強さ。
それから、。

(…いけないいけない)

これ以上思い出してはいけない、と頭を振る。
ふと気付くと、時計は昼を回っていた。
周りを見渡しても、もう皆昼休憩に行ってしまったようで。

(…おなかすいた、な)

仕方がないので、財布を持って、外へ出る。
季節はそろそろ秋に入ろうとしていて。
少し、風が冷たい。
足早に、通い慣れた喫茶店へ入る。

「いらっしゃ…あ、」

途切れた声に視線を向けると、店の奥で一人の青年が驚いたように口を開けていた。
見覚えがあるようで、ない。

(…待って、あの顔…)

『おねーさん、遊んでくれない?』

思い出す、軽い声。
夜の光。
掴まれた腕の強さと。
それから、はしたないほど乱れた、息。

「……またにするわ」
「あぁぁ!待って、おねえさん、待って!!」

引き留める声には聞こえない振りをして。
来た道を、戻る。
この喫茶店にはもう二度と来られない。
それどころか、この近辺にも。

(またお昼ご飯食べる場所探さないと…)

「待ってって、ば」

腕を掴まれる強さは、あの夜と同じもので。
見上げた瞳も。
頼りなさそうな表情も。
同じもので。

「何の用」
「だっておねえさん、あの時名前も教えてくれなかったし」

もう逢えないかと思ってたら、今日から始めたバイト先で逢えるなんて、と彼は嬉々として語る。

(今日から、だったの)

どうりで今まで見かけなかった筈だ。
けれど、もう、。

「もう来ないつもり?」

折角逢えたのに、と彼は寂しそうに、続ける。
毎日同じことの繰り返しだと思っていた。
けれど、これからは、変わっていくのかも、しれない。
他ならない、自分の心次第で。

「…どうかしら」

少なくとも、彼を知りたくなっている。
これは、変化のシルシ。

「戻りなさい」
「でも…」
「私も行くから」

それから彼とふたりで、喫茶店へ戻る。
席へ案内される頃には、お互いの自己紹介は終わっていて。

「ありがとうございましたっ」

また逢う約束を、していた。


【Fin.】


後書代わりの戯言

これも、LuvALシリーズです
ということは、モデルがいます(笑)
さて、誰でしょう


宜しければ感想等頂ければ幸いです!

web clap

2012/09/24 Wrote
2012/09/24 UP



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