―pre-falsehood― | ナノ
【―pre-falsehood―】


いつかは、そうなるだろうと思っていた
触れられることに嫌悪を覚える自分が
唯一平気なのは彼だけだということを
ずいぶん前から私は知っていたから
だから、私は後悔していないのに

どうやら彼は、罪悪感を抱いているようで
それがなんだかかなしい


彼はとても丁寧に私の身体に触れる
時にはそっと、優しく
時には、壊れるほど強く
そして、私の身体の準備が十分に出来たとわかると
ゆっくりと、その身を沈める

肌を重ねることは嫌いではない
寧ろ好きだと言ってもいい
けれど、様々な体位を試そうとするところが少しだけ苦手だ
怖いと思う気持ちと
それを上回る好奇心とで
結局私はそれらを拒絶しないけれども
望まれれば、彼自身を咥えることだってしている
そして形を変えていく彼自身は、最終的に再び私の内側へゆっくりと入ってくる

彼が私の中へ入るのは、それが3回目のことだった
最初の頃は痛くてたまらなくて
早く終わって欲しくて仕方がなかった
次のときは、ほんの少し、意識が飛ぶような痺れを感じた
3回目は、はっきりと彼の熱さを意識することができて
とても恥ずかしくてとても嬉しくて
彼が、私の身体を気持ちいいと言ってくれることが喜びで
涙が、出そうになった

彼はまた、入る前も出した後も、とても優しい
優しくやさしく、私の身体に触れる
そして何度でも、私を心地よい気持ちにさせてくれる

いつも、時間に追われているのは私のほうで
彼はとても名残惜しげに私の身体に触れる
私も、名残惜しくないわけではないけれど
時間を意識してしまうと、もうどうしようもない


そうして残されるのは、喪失感と不安感
事後の彼は、混乱するほど冷淡で
人前では決して、触れ合うことはせず
甘い言葉も交わすこともせず
それだけではなく、存在を、隠そうとさえ、する

それが言いようも無く不安で仕方がなかったのだけれど
どうしてこんなに不安なのかようやくわかった
期待して
裏切られたときに
失望するのがいやだから
だから、言葉がほしいんだ


今となってはもう、遅いのだけれど
自分が、そうやって温もりも与え合える、そういう存在であったことを
たとえばそれが、痛みを伴うことであっても
受け入れてもらえたことを幸運に思うべきなのかもしれない
いろんなことに目を逸らして
それでも一緒にいられることを幸運に思えばよかったのかもしれない


もう、すべては、手遅れだけれど


【Fin.】

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後書代わりの戯言

6月に書き残していた雑文に、ほんの少し後日談を。
【falsehood】に通じるかもしれませんね
(なので、【pre】が付く・笑)

内容が内容なので、18禁(笑)


2008/06/18 Wrote
2008/08/10 UP
2010/07/30 再UP


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