着信


彼の為に設定した音が鳴り。
誰かの悪戯かと、半信半疑で、端末を手にした。
彼が、自分の端末を誰かに渡すことなどありえないとわかっていながらも。
期待して、裏切られて。
そして、溜息をつくのはもう慣れてしまって。

(あかんなぁ…)

年下の青年に、翻弄されている。
それがまた、心地よいとさえ感じているのだから、始末に負えない。

「もしもし?」
『……』
「あんなぁ…だんまりやと、このまま切る…」
『寒くて』

言葉を遮るように被せられて。
にんまり、としてしまう。
彼の本音を引き出すには、こういう方法が一番なのだ。

「こっち来ぃ?」
『面倒くさいです』
「迎え行くさかい」
『…15分しか待ちません』

こちらの返事を待たずに切れてしまった画面に、そっと口づける。
15分とは言うけれど、彼はきっと、ずっと自分を待っている。
そういうところが、愛しくて仕方がない。

(どろどろに、甘やかしたる)

チャリ、と車のキーを手にし、足を踏み出す。
一歩ずつ、かわいらしい恋人への距離を縮める為に。


【Fin.】


Twitterタグより。
神父さんリクエストで、出猿


2013/11/25


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