ひとりきり置いていかないで


苦しくて。
泣きたくて。
涙が、零れる。

「ふし、みさ…」

でも、決してそれを恋人には伝えてはいけない。
彼は、とても繊細で優しくて。
俺の心をすくおうとするから。
いつも彼を支えて、守る存在で在りたいのに。
これでは、いけない。

「秋山さん、ばかだなぁ」

そっと、後ろから抱き締められて。
あぁ、この人には本当になにも、隠し事は出来ないのだと痛感する。
どうしてこの人は。
こんなにも優しいんだろう。

「俺が優しいんだとしたら、それは秋山さんだからですよ」
「俺…?」

少しだけ唇の端を上げて、微笑んで。

「だいじなのは、あきやまさんだけだから」

その言葉に本当に涙腺が崩壊したかと思うほど、涙が溢れて。
けれど、年上のつまらない矜持で、見られまいと、彼の肩に顔を埋めた。

「俺だって、あんたを好きなんです」

滅多に聞けない彼の本心。
あぁ、そうか。
想うばかりだと思っていた。
なのに、同じように想われていると信じられなくて。
この不安は、たぶん。

「すき、です」
「はい」
「ふしみさんが、」
「俺もです」

ぎゅっとしがみついて。
どちらが年上かわからないですね、と笑われて。
それでも、彼がそれを許してくれるから。

「ずっと、傍にいますから、傍に、いてください」

小さな声で、はい、と囁かれて。
そっと、顔を寄せて。
口づけて。
やっと、涙が止まった。


【Fin.】

診断メーカーより。
お題:贖罪アニュス‐デイ


2013/08/19


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