二回目の嘘に瞬きする


本当に、おうさま、なんて存在はろくでもない。
噛み締めた唇から血が滲むのがわかる。
これは、逆恨みだ。
もう数十分も、何度も殴られ、蹴られ、切り裂かれている。
痛みはそれほど感じられず。
浅い傷が多いのは、わざとだ。
これは見せしめだから。
障害が残る程の深い痕は残さないのだ。

「あんたの言う、王様ってやつは、いつあんたを助けに来るんだろうな」

いやらしい笑い方に、溜息が漏れそうになる。
でも実際にできたのは、ほんの少しだけ、眉をしかめることだけだ。

(…来る、わけがない)

危険性の高いストレインを保護し、時には投獄する、という姿勢を気に入らない者は多い。
彼らもまた、その中の誰か、なのだろう。

「来なければ来ないで、あんたもそれだけの存在だってことだよなぁ」

へらへらと笑う姿に、自由にならない手をぐっと握り締めた。
今ここで、彼らの挑発に乗るわけにはいかない。
それをすれば、こうして我慢している意味がない。

「では、こうして此処に来た以上、彼はそれなりの存在ということですね」

涼やかな声が、辺りに響く。
あぁ、やっと来たのか、と力が抜ける。
力が抜けて、気を失いそうになる。

「伏見くん、しっかりしなさい」
「…遅いっすよ」
「すみません。けれど、貴方は待っていてくれると思っていましたから」

柔らかい声に、喉の奥で、なにかが込み上げそうになる。
待っていた。
彼を、待っていた。
どれだけ痛めつけられても。
言葉に傷付けられても。
きっと来ると、信じていたから。

「…帰ります」
「えぇ、帰りましょう」

嬉しそうに身体を支える様子に、溜息と苦笑が漏れる。
こういう素直なところが、きっと自分は…。

(これだから、おうさまってやつは…)

そっと、手を伸ばして。
手に触れて。
温もりを確かめる。

「ふ、しみくん?」
「来てくれて、嬉しかったです」

そっと顔を寄せて。
一瞬だけ、唇を触れ合わせる。
この温もりと。
存在の為に。
たぶん、自分はいるのだと。
素直に、思えた。


【Fin.】

あるみさんリクエスト。
診断メーカーより。
お題は、反転コンタクト様から頂きました。


2013/08/14


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