通じたり、繋がったり、強くなったり


意気地なし。
卑怯者。
優柔不断。
何を言っても、彼はただ、柔らかく困ったように微笑むだけで。
だから俺はいつも。

「…もういい」

諦めるしか、ない。
好きだと伝えて。
好きだと言ってもらえて。
恋人同士という関係になったのに、この距離感はなんだろう。

(大人ぶりやがって…)

恋というのは、想いを伝えあって。
そして、寄り添えればいいのだと思っていた。
それだけでは足りなくて。
勇気を出して触れようとするのに。

『…すまない』

その言葉で、引き下がってしまう。
好きだから。
好きなのに。

「たった、7歳じゃんか…」

彼が何を恐れているのか、わからないわけではない。
けれど、同僚なのだ。
有事の際には、背中を預けて、肩を並べて、力を合わせる関係なのだ。
そこに年齢の差等関係ないはずなのに。

「あ、加茂っ」
「…道明寺」

どうしても諦めきれない理由の一つが、彼の表情だ。
真っ直ぐに前を見て、時には厳しい顔をしているのに。
俺を認めた途端、柔らかくなるのだ。
瞳の奥に、想いを湛えて。
言葉にしないけれど、好きだと伝えてくれる。
だから、不安は感じても、離れたいとは思えない。

「今日アレ食いたい」
「またか…」
「いいじゃん。加茂の美味いし」

寮室へ戻る道すがら、他愛のない話をする。
上司のこと。
同僚のこと。
昔のこと。

「…っと」

何かに躓いて、身体がよろける。
慌てたように、彼が、声を上げて。
それから、身体を引き寄せてくれた。

(加茂のにおいだ)

久し振りに感じる温もりに、幸せを感じる。
この腕のなかは、自分だけのものだ。
す、と顔を寄せると、さりげなく、けれど、はっきりと避けられた。

「…加茂…」
「すまない」

涙が、溢れる。
ほろほろと、零れて。
止められない。

「道明寺…?」
「俺、好きだよ…加茂が、好きだよ…?」
「あぁ、俺も、だ」

瞬間、怒りが芽生える。
何処までも縮まらない距離。
空虚な間。
なにもかもが。

「じゃあ、どうして、なにもしないんだよっ」

好きだ。
だから、触れたい。
繋がりたい。
そう思うのは、。

(俺だけなのか…?)

「も、いいよ」

ごめんな、と笑って。
そっと、身を離した。
好きだから。
強引に迫りすぎて、嫌われたくない。

「…アンディ」
「え…」

耳慣れない言葉に驚いて顔をあげると、。

「んん…っ」

つよく、引き寄せられて。
ふかく、口づけられた。
息もできないほど。
はげしく。

「…んぁ…は、」
「す、すまない」

やっと息ができるようになったのは、たっぷり数分は貪られたあとだった。
その間も、どれだけ胸元を叩いても。
隊服を握って、掴んでも。
ちっとも、離れなくて。

「…加茂って、我慢、してたのか…?」
「そうだ」
「なんで…」

じっと見つめると、気まずそうに、視線を逸らされた。

「俺は、お前よりも、年上だから」

これでも我慢していたのだ、と。
ちいさく、ちいさく囁かれた。
その言葉に込められた想いに気付いて。
うれしくて。

「…ばぁか」

今度は、寄せた顔を避けられたりはされなかった。
やさしく、やわらかく、触れて。

「すきだ」

なんども、囁いた。


【Fin.】

チカさんリクエスト。
お題は、反転コンタクト様から頂きました。


2013/08/13


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