草食獣の思惑


好きだったのが、自分だけだと思わないでほしい。
こっちだって、ずっと好きだったのだ。
欲しくて、ほしくて。
彼の優しさだとか、視線だとか。
温もりだとか。
そういったすべてを、自分のものにしたくて。

『好き、です。付き合って下さい』

震える声で、今時高校生でもしないような、そんな初心な告白をされて。
嬉しくて、舞い上がって。
でも、それを悟られたくなくて。
仕方がないから付き合ってやる、なんて言ったけれど。
本当は、ずっと手に入れたくて仕方がなかった。
これでやっと、彼の何もかもが自分のものになって。
自分の何もかもが彼のものになるのだと、信じていた。
なのに、。

(3か月だぞ)

付き合い始めて3か月経つというのに、なにもないのだ。
キスも、セックスも。
それどころか、手を繋ぐことさえも。

「……骨も残さず食ってやるよ」

とうとう我慢の限界が来て、押し倒した。
だって、そうだろう。
好きな相手と付き合うことができて。
そして、いつも傍にいることができる。
特別セックスが好きなわけではないけれど。
まだ若いのだ。
ただ気持ちいいことがしたいだけではなくて。
その奥にある、温もりだとか、触れ合いがほしいのだ。

「ん、ぁ…は…ひもり……きもち、い…っ」
「ふしみ、さ…そんなに…っ、あぁ、」

いわゆる騎乗位の体位で、彼のモノを、受け入れる。
やっと繋がれたという喜びと。
想う相手と繋がるという悦びで。

(イっちまいそう…)

「な、…気持ち、いい…?」

自分だけが気持ちよくなっていいわけがない。
彼も、気持ちよくなってもらわないと、意味がない。

「は、い…っ」

その言葉が嬉しくて、うれしくて。
満面の笑みを、浮かべた。
たぶん、今まで見せたことがないほど。
喜びに満ちて。
悦びに満ちている。
そんな、笑み。

「ふ…、さるひこ、さん…っ」

ぞくり、とした。
初めて名前を呼ばれて。
身体の内側にある彼を、きゅ、と締めてしまうほど。
今まで感じたことない、快感で。

「いい、ですか…っ、猿比古さんっ」
「ん…っ、イイ…氷杜ぃ…っ」

腰を掴まれて。
上下に揺さぶられて。
ヘタレだと思っていたのに。

(とんだ、草食系、だなぁ…氷杜)

思考がぐずぐずに崩れる。
もう自分が何を言っているのか。
何を出しているのか、わからなくて。
ただ、ただ。
彼の与えてくれる熱に、溺れて。
この上ない充足感に満ちて。
意識を、飛ばしてしまった。

(すきだ)

最後に想った。
言葉にしていた、のだろう。
目に映ったのは、頬を染めて、潤んだ、飢えた瞳で自分を見つめる彼だったから。


――どんだけ草食系だよと思ったら、ロールキャベツ系とはねぇ…
――ふ、伏見さんっ


【Fin】.

以前らすちゃんに書いて頂いた、こちらの作品の伏見さん視点です。


2013/07/03 Wrote



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