もっと愛して、奥まで愛して


 牙を立てて齧り付いた鰤の身を、ほろりと柔く舌で崩す。甘い脂が喉を滑り、彼の飢えた胃袋に落ちていった。
「美味い」
 笑う吐息がくすぐったかったのか、少女はくふんと鼻を鳴らす。彼女は彼をからかうように、ついと指を持ち上げて晒した身を隠した。
 本能で生きる捕食者は、焦らされるのが好きでない。隠した指先を、彼は強引に引き寄せた。くちびるの先で爪をなぞり、ひと舐めしてから咥えてしまう。
「出し惜しみなんざするな」
 縦に裂けた瞳孔を細めて、彼は剥き出しの欲望を晒した。
「骨の髄までしゃぶってやる」








「きゃはははにゃっ様めっちゃ食ってるwwww」
「あっ、鰤さーん、あんまりあげすぎないで下さいね? 最近にゃっ様ちょっとお腹メタボ気味で」
「うるせ」
「きゃはははッ」

 以上、アジュコ家での夕食の風景でした。








2012/02/17 up



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