おんなのこ遊び




※盗賊二人とも女体化
※百合百合しています
※ちょっとしたエロ








「よりによって両方とも女とか……有りえねぇ。マジ有りえねぇ」
「平等と言えば平等だけどね」
 神の創った造形物で、最もなめらかで美しい形。誰がどう魔法をかけたのか、豊かな胸の膨らみや細い手足の造りに身を包んで、ローランサンは苛立たしげに吐き捨てた。
 見慣れない自分の肢体は、しなやかな肉で丸みを帯びている。恐ろしいので鏡は見ていないが、襟足を隠す髪の下で折れるほど首が細くなっているのは気付いていた。喉仏もない。特に窮屈なのは胸元で、少し動くたびに波のように揺れる感覚が馴染まなかった。
 そのほか色々と、あったりなかったりする。
「あー、くそ。男としての尊厳まるでなしかよ。お前は元が元だから、違和感なくて良いよな」
「そうでもないよ」
 話しながら小さく首を傾げるイヴェールの仕草は、男の時と変わらない。物腰の柔らかさは以前からのものだが、既に馴染んでしまったのか取り乱すことなく、ローランサンの慌てぶりを見ては密やかに笑っている。どういうつもりか隣にぴとりと座っているので、華奢になった互いの肩が触れ合って暖かい。
「ローランサンは変わりすぎだね。どうしよう、可愛いな」
 うっとりと花を観察するように目を細め、こちらの襟元に可憐な指先を絡めてくる。お前の方が倍可愛いんじゃねぇの、と突っ込もうかと思ったが癪なので口には出さなかった。
 全体的に小柄になった相方は、抜けるような白い肌と淡い桃色で出来ている。盗みに入った屋敷で似たような絵画を見た事があるが、ふわふわと揺れる銀髪や精巧に整えられた顔立ちは以前よりも随分と甘い。銀の睫毛は反り返って瞳を飾り、そのせいか物憂げだった顔が少し幼くなって見えた。
「いいな、睫毛も長い。目も切れ長で、美人だ」
 そうして指の背でローランサンの首筋を撫で上げて、とろけるように笑うのだ。先程から彼(今は彼女、か)は好奇心の塊みたいに目を輝かせ、新しく飼った小鳥を愛でるように触れるばかり。こちらとしては面白くない。
「少しは嫌がれ。楽しむな」
「動揺している君が面白いんだよ。女性になると肌が染まりやすいんだね……ここ、赤い」
 そう言って目尻から頬を辿り、そっと耳朶に触れてくる。口説かれている気がするが、何しろ相手は花も恥じらうような乙女なのでしっくりこない。ローランサンは口を曲げ、振り切るように長い脚を組み直した。
「そりゃどうも。嬉しかねぇけど」
「肌も綺麗になってる……唇も」
 こちらの不機嫌に構わず、イヴェールは小首を傾げて覗き込んでくる。囁く声音は心底楽しそうだが、どことなく秘密めいた響きがあった。ゆっくりと下唇をなぞられてローランサンは怪訝に眉を寄せる。
「線も、細いね」
「……女になったんだから当たり前だろ。何なんだ、お前は」
「ふふ、さあ?」
 ふわりと首を傾げる銀色の、からかうように含みを持った魅惑的な艶っぽさで、渋々ローランサンは事態を飲み込んだ。つい視線を逸らしたい衝動に耐える。
 そりゃ耳も赤くなるだろう。軽口の延長のように他愛なく体を寄せ合ってはいたけれど、女性特有の柔らかさで誘うイヴェールの仕草に、どうにか思わない男(今は女だが)はいない。
「……節操ねぇな」
「君が美人なのがいけない」
 恥じらいもなく笑んだ表情に、こちらが男のままだったら素直に押し倒してやるのに、と歯噛みしたくなった。自分は別に聖人でも何でもないのだし、男同士の時も肌を重ねていたのだから今更タブーと言う訳でもない。だがどうしても状況の異常さが気になって、雰囲気に流される事に抵抗があった。
 しかし頑なな態度を照れているのだと思ったのだろう。ローランサンの手の甲に頬を寄せ、促すようにイヴェールは口付けてくる。ぴくりと、思わず指が震えた。
「……おい」
「可愛い、ローランサン」
 何度目かになる賞賛。熱のこもった静かな声音にくらりとした。他の言葉はないのかと思うほど、桃色の唇は何度も繰り返す。可愛いと。
「……お前も首とか腰とか、凄ぇ細くなってるけど」
「ん……っ」
 意趣返しに相手の腰をわざとらしく引き寄せると、僅かに息が跳ねる音がした。猫が甘えるように体をしならせたイヴェールの、シャツを押し上げる小ぶりな胸の膨らみがこちらにも当たって、緩い弾力がざわりと血を騒がせる。
 ああ、確かにこれはやばいかも。
 なだらかな腰の線を確かめるように腕を動かすと、ふるふると軽く首を振ってイヴェールは唇を噛んだ。声はない。代わりに少し困ったような微笑を浮かべると、膝立ちになって首を緩く抱いてくる。
「……ローランサン」
 一つ、名が呼ばれる。甘やかな女性の唇が、じゃれるように瞼や鼻筋へ口付けていく。その間も彼の指先はローランサンの髪を絡める遊びに励んでいて、うなじを撫でられる感触に不覚にも息が乱れた。
「本当、いいなぁ……」
 うっとりと囁いて唇を重ねてくる相方は、何故こうも積極的なんだろう。元からフェミニストだったが、そんなに女の俺がタイプなんだろうか。男の時よりも肉厚な下唇を柔く食んで、焦れるような仕草で体を摺り寄せてくるイヴェールは、確かに匂い立つ欲の色があった。ローランサンが文句を言う隙を与えず、蜜を舐めるような優しい方法で唇を味わっている。
「サン……」
「……っ、ぅ……」
 畜生、リードを取られている。ローランサンは口付けに応えながら、どうしようかと思案した。悔しいがキスの技術では敵わない。互いに浅く息を乱し、際どい深さで舌を拒んだイヴェールは顔を離すと、さらりと肩の髪を払って鮮やかに笑った。
「胸、結構大きいんだな。ずるい」
 からかうようにローランサンのシャツを剥ぐ。外気に晒された肌が一瞬粟立った。それを下から相手の白い掌で包み込まれると、改めて自分が女になったのだなと妙な気がする。心臓ごと押し上げられているようだ。
「っ、おい……勝手に揉むな」
「……気持ち良い?」
 細い指先で膨らんだ肌を愛撫しながら、イヴェールはこちらを窺う。自分の胸元に身を寄せる彼の光景に背徳的な物を感じたけれど、たぷたぷと揉まれる感覚はどこか遠い。
「感覚はあるけど……別に。こんなもん?」
 内心ほっとして口の端を上げる。商売だから昔相手にした娼婦達もアンアン喘いでみせたのかもしれないが、特別な性感帯でもないのかもしれない。思っていたほどじゃない、というのが正直な感想だった。素っ気無い反応にイヴェールは口を尖らせ、不満そうな顔をする。
「君が鈍すぎるだけだろう。せっかくなのに詰まらないな……」
「残念でした。お前は?」
「い……っ!」
 衣服ごと相手の胸を片手で掴むと、びくりと悲鳴が上がった。
「馬鹿、痛いって!」
「ああ……力入れすぎた。大丈夫かと思ったんだけど」
「……悪かったな。小さくて」
 イヴェールはそこで初めて決まり悪そうな顔をした。拗ねたのだと気付き、ローランサンは密かな安堵と共に髪を掻きあげる。余裕ぶったイヴェールに迫られるよりも、こちらの方が扱いやすい。
「別にそこまで小さくはねぇだろ。俺は好きだけど」
「………」
「もっかい触らして」
 優しくするから、と促せば渋々こちらを向いた。邪魔だったのでシャツの釦を外せば、形のいい透けるような白い乳房が顔を覗かせる。確かにローランサンに比べて小ぶりだが、彼の繊細な造詣に似合って好ましかった。
「……っ、ぅ……」
「気持ちいい?」
 掌で揉みしだくと、柔らかな肉は従順に形を変える。イヴェールも慣れない感覚に戸惑っているようで、曖昧な表情で息を乱した。だが慎ましやかな桃色の尖りを爪先で引っかくと、ひく、と小さく喉を鳴らす。ようやくいつもの調子が出てきた。
「相変わらず押しに弱いのな」
 ローランサンが耳元で笑うと、むっとしたように押し黙る。だが声を抑えていても薔薇色に染まる女の肌は誤魔化せない。向かい合わせに座っているので、身を捩るたびに互いの腰や太股が合わさるのも心地よい刺激になった。倒錯した甘い眩暈がする。
 どこへ触れても柔らかすぎる二つの体に、今更ながら溜息が零れた。本当、自分が男のままだったら押し倒して散々泣かせてやるのに。
「畜生……大人しくしとけよ。悔しいから」
「ぁ、あ、やだ……」
 思わず呟いて胸と一緒に背筋を撫でると、弱々しい抗議の声が上がった。口だけかと思ったが、どうやら本気で嫌がっているようで強く肩を叩かれる。
「痛ってぇな。何だよイヴェール?」
「……僕ばかりは、嫌だ」
 遂に一方的な行為になってしまった事が悔しかったのだろう。押しに弱いくせに何故毎回リードを勝ち取ろうとするのか逆に不思議だが、しつこいくらい最初は可愛い可愛いと言っていたくらいである。あの積極性を振り返ってみると、今回ばかりは勝算があったのかもしれない。
「仕方ねぇだろ。俺、感じなかったし」
「……君もちゃんと意識すれば、気持ち良くなると思う、けど」
「……何。何かしてくれんの?」
 珍しい申し出に揶揄するように聞き返すと、は、と短く息を吐き、イヴェールはこちらの胸に顔を埋めた。不意を打たれて肩を震わせたローランサンに気を良くし、ちゅ、と乳房に軽く口付けてくる。擦り寄った頬が暖かい。
 手で胸を寄せて揉みながら、キスの上手い唇は、何度も先端を甘く噛んだり、舌先で押し潰したりと健気に動いた。最初は特にどうとも思わなかったが、次第に痛みに近い痺れが沸き上がってくる。前が開いたままのイヴェールの胸元も押し付けられて、滑らかな肌が擦れる感触にじんわりと下腹が熱くなった。
「……っ、何か……」
「うん?」
「地味に気持ちいい……気は、する」
「そう。良かった」
 どちらかと言うと精神的な意味で興奮している気はしたが、それはそれは嬉しそうにイヴェールが笑うので、言いようのない衝動と共にローランサンは言葉を飲み込んだ。代わりに髪を掻き回してやって、頭を剥がす。
 ああ、もう。女って奴は。
 ちょっとした仕草が別の意味を持って見える。しなやかな膨らみや張りのある肌の匂いが蜜の予感を物語る。自分の皮膚だって先程から格段に敏感で、もどかしく快楽を求め続けていると言うのに。
 とりあえず普通の女を相手にするようにイヴェールの太股の付け根を辿って、衣服越しに奥まった場所を探った。慌てたように足を閉じようとする動きを制すと、ローランサンの指が見えない窪みをなぞるたび、びくびくと堪らない声で喘いでくれる。
「……ぁっ、や、あ……」
 この下に潜むのは、熱を孕むために用意された、優しく濡れた甘さの源だ。今は浅ましい欲で支配されようと、とろける物は男も女も変わらない。
「なあイヴェール……この先、女同士ってどうやんの?」
 少し思案した末、ローランサンは試しに耳元に囁いてみた。触れるか触れないか、際どいまま吐息を耳朶へ。
「……どう、なんだろうね」
 熱っぽい瞳が潤んでいるのを見ると、同じようにイヴェールも物足りないはずだ。脚をすり合わせ、途方に暮れたように首を傾げている。
「くそ……やり方はどうナもいいか」
「……適当だな。大丈夫か?」
「勢いで何とかなるだろ」
 不安げな目元を舐めてやって、そうして密やかな、柔らかいばかりの夜に沈んだ。






END.
(2009.02.17)

全世界にごめんなさい。もう可愛いなら百合だっていいじゃない。


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