「……あれ、なんで部屋に電気が……あっ」

「おかえり、早かったな」

「姫さん!?」

「悪い、うちのクーラーが壊れてな。涼みにきた。勝手に上がらせてもらったぞ」

「いえ、嬉しいですけど、来るなら来るってメールしてくれれば夕飯の準備も……うえっ、ちょ、何見てるんですか!?」

「何って、テーブルにあったAVだが?」

「うわああああああ、や、いや、違うんですそれは昨夜の宅飲みの時に同僚が勝手に置いていったやつで、いや、まずはそれよりも消して!まず消して!画面!」

「何だ。堂々と置いてあったから、暗に私に参考にしろとの意味かと思ったんだが。しかし万引きものとはハードルが高いな。まだ女教師とかだったら多少は」

「いやいやいや、違います違います!あんたにそんな恐れ多い!それより消して!早く!」

「む、これからようやくバイト長から店長にバトンタッチを」

「展開を気にしなくていいから!」

「あ」

「……はー、もう……」

「必死だな、シリウス。リモコン壊すなよ」

「……こんなのがあって、怒ってませんか?」

「いや、特には」

「…………」

「男ならそういうものだろう」

「いや、あんた、その……うーん……姫さん」

「ん?」

「抱きしめていいですか?」

「……構わんが」

「じゃあ失礼して……」

「うん」

「……えっと、あの、晴れて姫さんとお付き合いさせていただいているのに、わざわざ知らないお姉ちゃんの裸とか、ですね」

「ああ」

「見なくても、いいです」

「……ふふ、多少は見ておけ。私の負担が軽くなる」

「え」

「成人するまでは手を出さなかったくせに、最近がっつきおって」

「いたた、つねらないで下さいよ……だって、お預け期間が長かったですもん。いちゃいちゃしたいです」

「お預けにしてたのはお前が強情を張るからだろうが。別に最近は珍しくないぞ。社会人と高校生」

「制服を着てる子に、とか、それこそAVの世界ですよ」

「まあ、犯罪っぽくはある、な」

「あんたに惚れてから色々と道を踏み外したのは確かですけど」

「何だ、人を腫れ物みたいに」

「ランドセルの頃から知ってる会社のお嬢さんに手を出したんですから、そりゃビビりますって。あんたの兄上達、色んな意味で凄いですもん。こりゃ首にされるかなって思いました」

「そう言えばオリオンも似たような事を言っていたな。奴の場合、私よりも邪魔が多そうだが」

「ん?」

「ミーシャを狙うならエレフを先に倒さねばならない。我が弟ながら手ごわいぞ、あいつは」

「あー……まあ、うん、三つ子って大変ですね。大将はどうした訳か姫さんとは普通なのに、ミーシャちゃんにだけは甘くて」

「ふふ、昔私がエレフをいじめすぎたせいだろう。おもしろいくらい泣き虫でな。慰めるのがミーシャだった」

「あ、成る程、凄く納得した」

「……ん、シリウス」

「はい」

「それでお前、今、どこまでやる気だ?」

「……あー…」

「おい、……っ」

「……姫さん、柔っこい」

「……お前はムキムキだな」

「現場担当ですもん。あー、あんた腰細ぇなあ、もう」

「どうせなら肩でも揉め」

「肩かー…」

「不満か?」

「不満ですよ、そりゃ」

「涼みにきたのに、お前に撫でくり回されると熱くて敵わん」

「こう見えて子供体温なんです、俺」

「それだけか?」

「いや、まあ、凄く人為的に熱くしようとしてますけど……」

「……お前はどんどん下心を隠すのが下手になっていくな」

「だって、もう昔みたいに隠さなくていいんですから」

「そうか」

「そうです。ああ、もう、姫さん可愛いなー!今だからこそ声を大にして言いたい!」

「ふふ、言ってろ」




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